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想いの交差【夕神 迅×希月 心音】

「はぁー! 食べた、食べた! おいしかったですね、やたぶき屋のラーメン!」
幸せいっぱい、という顔で希月心音は、ググッと伸びをした。
「……個性的な味だったがなァ」
そう低い声で返したのは、数時間前まで法廷で一緒だった夕神迅だ。
あの、衝撃の連続だった法廷で。
母の悽惨な死。
自分への疑惑。
背負われた罪。
7年間の重み。
明らかになった真実によって、がんじがらめの鎖から解放された。
心音も夕神も、だ。
空には星が瞬いている。
やたぶき屋からの帰り道、各々が家へと向かう中、こちらの方角は心音と夕神の2人だけとなった。
気を使ってくれた、ということでもあったのだろう。
お互いを思い、想像を絶する苦しみを抱いた7年間を過ごしてきた2人を。
「ところで夕神さん」
「あァ?」
長い髪をふわりとなびかせて、心音は夕神の正面に回り込み、彼の顔を見上げた。
「今って仮釈放中なんですよね? あの裁判中限定ってわけじゃなくて」
「局長も係官もいねェってこたァ、そうなんだろうなァ。……月の字ィ、何が言いたい?」
彼女の言葉の節に、何かの感情が込められていることに気づいたのか、夕神は怪訝そうな声を上げる。
すると、心音はにんっと満面の笑みを浮かべて両手の拳を握った。
「じゃあ、決まりですねっ!」
「……っ、おい」
ぐいっと腕を引っ張られる。
ふと鼻をくすぐる甘いにおいがした。檻の中では全く感じなかった“女”のにおいだ。
「今日はうちに泊まっていって下さい。ねっ!」
無邪気な笑顔にドキッとする。
7年前に最後に見た、返り血に濡れた笑顔が脳裏をよぎった。
あの時とは全然違う、暖かい微笑み。
「何を……っ、言ってやがる」
「だって、今日は行くところないでしょ? ウチ、狭いけど夕神さんをご招待しちゃいます!」
自信満々のピースサインをして、まるで恋人同士のように腕に絡み付く心音に、夕神は少し動揺した。
7年間、夕神の中の心音は小さな11歳の女の子のままだった。
初めて法廷で会った彼女は、大人の女の顔をしていた。
なのに、無垢な子どもの顔で、けれどそこにいるのは成長した女で。
しかも、家に泊まっていけ、などと言う。
1人の成人男性に向かって、だ。
「……おめえさん、ちったァ頭で考えて話せ」
「ひっどーい! 考えましたっ! わたし、決めてたんです! 夕神さんの無実を勝ち取ったら、2人で祝杯をあげるって!」
「……ガキが何言ってやがる」
「とにかく! 今日はわたしの家に来て下さい!」
随分と強情に成長したもんだ、と心の中で毒づいた。
けれど、7年間も囚人として過ごして、肉親の姉も逮捕されて、行く宛がなかったのも事実だ。
(……一晩耐えられるが自信がねェが……)
ひとつため息をして。
「……しかたねェ、行ってやらァ」
「やったー!」
夕神は渋々了承した。

心音の住むマンションは、大通りの外れにあった。
セキュリティもそれなりにしっかりしているらしい。
(どんなところに住んでるのかとヒヤヒヤしたが)
その点は安心できそうだ。
「どうぞ、上がって下さい!」
また腕を引かれる。
大の男には狭い玄関で靴を脱ぎ、促されるがままに部屋へと上がる。
8畳ほどの洋室。
黄色いシーツのベッド、白いソファ。
女の子らしい細身の机には心理学や六法全書と行った法律関係の本が並べられている。
広げられたノートには、今日の法廷で暴かれた7年前についての考察がびっしり書かれていた。
この事件に対する心音の想いが本物だったのだと改めて実感させられる。
……と。
「!」
背中から抱きしめられた。
腹部に回された手が震えている。
「……月の字」
「よかった……夕神さんの無罪が認められてっ、本当に……っ」
泣いてるのか、なんて聞かなくてもわかった。
彼女の手に自分のそれを重ねる。
今日の法廷で真実が明らかになるまで、記憶を封じ込んでしまうほどのトラウマを蘇らせ、母親殺しを疑われ、更に別の殺人まで被告人として立った心音自身ではなく、自分のために涙してくれているのだ、この少女は。
「……とんでもなく辛ェ思いをしたってのに、俺のことなんざどうでもいいだろう」
「よくないです! わたし……わたしっ、あなたを、あなたを助けたくて、ずっと、ずっと……っ」
7年前の証言台。
悲鳴にも似た声で、ずっと夕神の無罪を訴えた心音。
目を閉じれば昨日のことのように思い出せる。
自分が守ろうとした、大切な存在。
「…………ココネ」
夕神が呼んだ自分の名前にハッとして、心音の腕が緩む。
その隙をついて、夕神は彼女に向き直ると力いっぱい彼女を抱きすくめた。
「ゆう……っ」
「ココネ、…………ココネ」
自分がこの場にいて、彼女もここにいる。
それを確かめるように、夕神は何度も何度も彼女の名を呼んだ。
泣き虫だった心音。
ときおり自分に向ける笑顔を愛おしく思ったこともあった。
驚いた顔をした心音の目尻にたまった涙を指で強引に拭く。
そのまま濡れた頬に手を滑らせた。
「夕神……さん?」
心音の声にハッと我に返り、体を離した。
(俺ァ、何をしていた?)
心音はあの時の小さな少女だ。そう思い込もうとする。
7年の歳月を経て、変化しようとしている感情を押し込めようとする。
自分は彼女にとって、これ以上特別な存在になる必要などない。
「やだ……やめないで!」
「ココネ?」
心音が夕神の胸に飛び込んだ。
見上げられた瞳から、止まったはずの涙が、再び流れ出す。
「お願い、夕神さん……わたし……」
「やめろ、月の字。止められねェようになる」
そして、傷つける。大切なはずの彼女を。
「傷つかない!」
「っ!」
聞こえている。彼女には自分の心の声が。
「だってわたし、わたしだって、あなたが」
「……ココネ、頼む」
言うな。
すがるように抱きしめる。
喜びと恐怖が同居する。
「あなたが大切……なんです」
心音の声が夕神の奥深くにまで染み込んだ。
「……ぜってェ、後悔するぜ。おめえさんはまだ若い。イイ人だってこれから……」
「異議あり!」
遮るように声を上げ、夕神の目をまっすぐ見据えられる。
「……異議ありですよ。夕神さん。……あなた以上になるなんて考えられない」
目の前にいる彼女は、もうあの時の小さな少女ではない。
夕神は、自分を落ち着けるように目を閉じた。
「…………7年間」
「えっ?」
「7年間、事件のことばかりを考えてきた。ずっとココネを気に病んできた。ずっと、ずっとさァ」
再び開いた瞳は、検事席にいるときとは違う、暖かさを秘めていた。
「……俺を焚き付けたのは、おめえさんだからな。覚悟するんだなァ」
「なっ…………っ」
心音の両頬に手を添えて、小さな唇にキスをした。
自分の中に存在するのを知りながら、ずっと見ない振りをしていた感情が溢れ出す。
「夕……神さん……っ、わたし……」
「……黙りな、月の字ィ。もう反論は許さねェ」
長い彼女の髪を右手で弄びながら、もう一度心音に口づけた。
今度は重ねるだけじゃない。彼女の全てを吸い尽くそうとする、深いキスだ。
「んんっ、うっ……!」
彼女の舌に自分のそれを絡ませ、ゆっくり動かすとぎこちない動きでそれに答えがくる。
きっとこれが初めてだ。嬉しさと申し訳ない気持ちが募る。
けれどもう、止められるわけがない。
足が震え始めた心音を抱き上げ、ベッドへと移動する。
自分の胸に収まるほどだったことをふと思い出し、夕神は苦笑した。
(オッサンになったもんだなァ、俺も)
心音をおろし、覆い被さるように夕神もベッドに上がる。
ギィ、ときしむ音がした。
「おいおい、静かだなァ。月の字。いつもの威勢はどうした」
からかうようにそう言うと、心音は真っ赤になってそっぽを向いた。
……可愛い。
愛おしい。
このまま全てを手に入れたい。
心の奥が苦しくなる。
こんな気持ちはすっかりご無沙汰だ。
「……夕神さんの心の声が」
心音は首から下げたモニ太をぎゅっと握った。
「まっすぐ届くから……わたし嬉しくて、どうにかなっちゃいそうで……」
全部お見通しなのだ。この娘には。
「おめえさんには隠し事ができねェなァ」
きつく締めたネクタイを緩めながら夕神がこぼす。
「ココネ、好きだ。俺ァ、おめえさんのことが愛しくてたまらねェ」
「わたしも、好き。大好き。夕神さん」
心音の手が、自分の頬に触れた。
そして促されるままにまた口づける。
「んっ!」
服の上からやわからな膨らみに触れると、心音がくぐもった声を上げた。
「……いっちょ前に成長しやがってまァ」
「そんな……こと……っ」
熱を帯びた表情。
女の顔。
ひどく欲情する。
スーツの上着を脱がし、ソファへと投げた。
自分の上着も一緒に投げる。
ワイシャツのボタンをプツプツと外せば、白い肌と形のいい胸がレースのついた下着と共に顔を出した。
「……もうあんときのガキじゃねェんだなァ」
感慨深くそう言うと、顔を真っ赤にして心音が胸を隠した。
「あ……当たり前ですっ! 何年経ったと思ってるんですかっ」
その様子にくっくっと笑って、頬に指を滑らせる。
「悪かった。もう立派なオトナのカラダだ」
「あっ……!」
手際良く彼女の腕をどかすと、夕神は下着を上へと押し上げた。
大きく揺れる2つの双丘。
間に挟まる水色のネクタイが、夕神の男を高ぶらせる。
「ふあっ!」
ピンク色の花を摘まれ、心音は体をのけぞらせた。
夕神は左の乳房に舌を這わせた。
白いものが混じった夕神の髪が、心音の肌に触れる。
心音の体は想像以上に敏感で、熱い吐息が頭上で漏れている。
「だっ、だめ……っ」
「……何が」
スカートの中に手を伸ばすと、心音がそれを拒む。
涙の混じった火照った顔で、夕神に訴える。
「“だめ”だと? ……そりゃァ、ムジュンしてるんじゃねェのか?」
彼女の制止もむなしく、夕神が触れたその場所はじんわりと湿っていた。
「……ここが証拠だ」
「あっ、んんっ」
人差し指で円を描くように触れて。
ゆっくりとストッキングを下ろして、またソファへと放り投げた。
「グシャグシャだ、月の字」
「い、いっ、言わないでっ、ください!」
手で顔を覆って、心音が声を上げる。
なんでそう、可愛い行動ばかりするのだろう。
どんどんいじめてやりたくなる。
夕神の手が乳房を離れ、体も下へと移動する。
そして、ブラジャーと対の下着に手をかけて。
「あっ……あっ……!」
ゆっくりと下げた。
糸を引く程濡れたその場所。
先ほど口をついた“グシャグシャ”という表現が的を得ている。
「やだっ、そんな……っ、見ちゃ、やっ……!?」
夕神の指が、つぷぷっと音を立てて心音の中に入る。
狭い、けれど熱いその場所はとても柔らかだ。
「ひゃっ、あっ、だめ、だめぇっ!」
ゆっくり抜き差しをする。今までにない喘ぎ声が心音から漏れた。
泉のように溢れ出る愛液が、彼女の太ももに伝う。
その姿はとても妖艶で、無邪気な少女の姿はどこにもない。
それを自分だけが見ているのだと思うと、優越感にも似た感情が生まれた。
「………」
「なっ!? 夕神さ、ああっ!?」
ぬらり、と。
彼女の秘部に舌を這わせた。
形を確かめるように、そして小さな莟を愛でるようになぞる。
彼女の手が、自分の髪に伸びたのがわかった。
けれどそれは無意識に快感を求めているように感じる仕草だった。
「だめっ、です。だめぇっ!」
仕草とは裏腹に、拒否する声。
それは言わせておけば良い。
ビクビクと震えるその体は嘘をついていない。
吸い上げれば、喘ぎ声は更に大きくなった。
「やっ、ゆうがみ、さんっ」
彼女の手に力が入るのを感じた。
すぐ後に体が大きく反応する。
それを確認して、舌を離した。
「う、ううっ、酷いです……っ」
「最高だった、の間違いじゃねェのか」
意地悪くそう言うと、ふいっとまたそっぽを向かれた。
肩で笑って、夕神はベストを脱ぎ、ネクタイを外す。
更にワイシャツを脱ぐと、引き締まった体が露になった。
「機嫌直せ、月の字よォ……」
言いながら彼女の手を自分のソレに触れさせる。
「!」
驚いたその顔にまた笑みがこぼれた。
「……おめえさんが可愛すぎて、こんなんになっちまってんだぜ。俺ァ」
「うっ、あ……」
夕神は、スーツのパンツから自身を取り出すと、心音の秘部へと宛てがった。
その先をゆるゆるとすべらせる。
「初めて……だな?」
夕神の言葉に、心音は赤い顔を更に真っ赤にして頷いた。
「……こんなオッサンで本当にいいのか?」
これで最後だ。
ここでならまだ戻れる。
「夕神さんが、いいんです……」
そんななけなしの理性も、彼女の言葉にあっけなく崩れた。
ゆっくりと自身を心音に押し入れる。
出来るだけ痛みを与えないように時間をかける。
すぐにでも犯してしまいたい気持ちをどうにか制して、狭いその場所を慣らすように押し広げた。
熱を帯び、気を抜けば果ててしまいそうなほど心地よい圧迫感。
耐えている心音に申し訳ないとは思いながらも、焦らすように少しずつ快感が攻めてくる。
「ココネ……っ」
絞り出すように声を発した。
苦しそうな彼女に口づけをする。
「だいじょうぶ、です。わたしは、だいじょうぶ……」
向けられた笑顔に、また危うく果てそうだ。
「動いて下さい、夕神さん」
「……いいんだな」
頷いたのを確認して、腰を引いて打ち付ける。
小さな声とともに、彼女の長い髪が揺れた。
心音の表情に注意をはかりながら、抜き差しを繰り返した。
「……はぁ、ココネ」
「あっ、あっ、ゆうっ、がみ、さんっ……!」
動きに合わせて、心音の甘い声が響く。
ベッドがきしむ。
熱い熱い感情が体の奥底からわき上がる。
火照った体がお互いにこすれて、その想いは勢いを増す。
心音の腕が、夕神の背に回される。
出来る限り近づきたくて密着する。
「んっ、あっ、あっ、あっ……っ!」
あの心音が、自分と交わっている。
幼い少女だった心音が、1人の女として自分と行為を交わしている。
守りたい大切な存在。
あの時とは感情がまるで違う。
「ココネ……っ、ココネっ」
ここにいることを確認する。
心音がいて、自分もいることを。
二度と会うことはないと。
幸せでいてくれるのならそれでいいと。
そう思ったこともあった。
全てが明らかになって、お互いにあの亡霊の呪縛から解放されて。
男と女として、ここにいる。
「迅……さん」
「っ……!」
ふいに呼ばれた名前に、体が震えた。
「くっ……!」
「あっ、ああああっ」
たぐり寄せた理性を掴んで、彼女から自身を抜く。
弾けるように欲望が飛び出して、心音の体に放たれた。
訪れたのは静寂。
お互いの息の音。
収まらない鼓動。
「迅さん……」
彼女の手が頬に触れる。
そしてそのまま導かれて。
「……ココネ」
優しいキスをした。

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