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百田と春川と 愛の鍵と愛の部屋【百田解斗×春川魔姫】

強制的に始まった、学級裁判という最低最悪のゲーム。いつ殺されるか、なんて怯えているだけなのは性に合わない。疑心暗鬼に身を投じるくらいなら、仲間を信じて助け合ってこの時を過ごしたい。唯でさえ、いつ自分の命が尽きてしまうかもわからないのだ。

「それに、平和なときはパーッと何かで発散してえしな!」
カジノ施設がモノクマ達から与えられてからというもの、百田解斗はその場所の常連となっている。今日も、“助手”である最原終一や春川魔姫とのトレーニングの前に一儲けしようと寄宿舎を出た。籠の中の施設であることを忘れてしまうほどの澄んだ空気と、キラキラと夜空に瞬く星々が百田を迎えてくれた。

「……またカジノ?」
「あぁ?」

一歩足を踏み出したところで、声のした方を見る。よく整えられた長い髪が風に揺れている。そこに居たのは百田の助手の一人、魔姫だった。

「おっ、ハルマキ! 今日こそ天井までコインを積み上げてモノクマ共をギャフンと言わせてやらなきゃな!」
「ふーん……。どうせ、アイツらの好きなようにされるだけなんだから辞めとけばいいのに」
「やらなきゃわかんねえだろ、やらなきゃ」

自らの拳と拳を胸の前でぶつけてニッカリ笑ってみせたが、魔姫は興味ないと言いたげにふいと顔を背ける。きっとハルマキもそのうちわかる、なんて言葉を掛けて彼女と別れた。
少しだけいい気分だ。冷たい言葉をぶつけてはいるが、彼女なりの気遣いだということを百田は知っている。周りから距離を置いて、一人でいようと心に決めていた彼女を引っ張り出したのは外でもない自分だ。そんな自分へ声を掛けてくれるようになり、魔姫との距離が少しずつ近づいていることを感じて嬉しくなったのだ。

「くっそー、どんだけ持ってきやがるんだよ!」
百田はもう何度めかわからないほどの叫び声を挙げると、一時のピークからは十分の一ほどになってしまったカジノのコインを眺めてため息をついた。

「一万十四枚……一応そこそこの景品は狙えそう、だな……」

元々景品に変えることなど頭には無く、ただただ上を目指したいばかりだったが、ここまで来たら少しでも得しなければ釈然としない。重い足取りでカジノルームの階段を登ると、景品交換所の前で足を止めた。

「あ? 『愛の鍵』……? なんだそりゃ」

景品交換のために必要なコインの枚数は一万枚。手持ち分でギリギリ交換できる。だが、残る枚数はほんの僅かだ。

「よくわかんねえけど、こんだけ枚数が要るってぇことは良いモンに違いねえ! うっし! いっちょ換えてやらあ」

鼻息荒くコインケースを交換所に押し付けると、交換口から小さな鍵が甲高い音を立ててこぼれ落ちた。
「これが、愛の鍵か?」

鍵を摘んで持ち上げる。名前通りハートの形の意匠をあしらった鍵だ。それ以外は何の変哲もないもののように思えた。手を握ったり開いたり、何かスイッチのようなものは無いかと探ってみたが、特に何かが起こるような様子もない。

「なんだよ、ちっと期待したっつーのに」

御守のような類のものか。そう考えて百田はズボンのポケットに乱暴に鍵を突っ込んだ。

その後に行われたトレーニング中は、連日のカジノ通いを助手の二人に窘められ続けて終了した。モノクマメダルを突っ込み、蓄えたカジノコインも突っ込み、ついには今日、何の特になるかもわからないアイテムを引き換えて。自分で考えてみてもちょっとどうかしている。普段の日常生活なら、決してこうはならないと確信を持って言えるのだが、非日常の現在の生活では何かに夢中になっていなければ自分を保ち続けられないような気もしていた。そんな鬱々とした百田の気持ちを読んでいたかのようにオープンした施設。どうせモノクマに踊らされているとわかっているのに、行かずにはいられない。本当によく考えられた狂ったシステムだ。
……そう言えば、カジノと同時にオープンしたもう一つの施設。新しく現れたわりに、鍵がかかっていて調査できずにいたのだが、あれはなんだったのだろう。などと、思案に暮れながら百田は、寄宿舎の自分のベッドに身を投げた。ギシッと軋む音がする。そのまま、ゆっくりと目を閉じた。
考え事をしていた頭がぼうっとして、どこかから湧き上がった眠気がじわじわと擦り寄ってくる。こうしていれば、夢の中へと誘われ、そしてまた憂鬱な一日がスタートする。そうして百田はいつの間にか意識を失っていた。

「……田。百田っ!」
「ん……あ?」

寝入っていた百田の体が大きく揺すられた。耳に入るのは聞き覚えのある女の声だ。重いまぶたを開きまばたきを繰り返すと、ぼやけた人影が次第に鮮明になった。

「ハル……マキ……? どうして……」

身を起こして、眠気を払うように頭を大きく振る。ここは自分の部屋だ。彼女がわざわざお越しにやってくるということは、何かあったのだろうか。それよりもどうやって鍵のかかった部屋に入ってこれたのだろう?

「私もわけがわからないんだけど。気がついたらここにいて、あんたが床で突っ伏して寝てて」
「床? オレはフツーにベッドで寝たはず……」
「はあ……目が覚めたならよく周りを見て」
「お、おう……?」

魔姫の言うように、ぐるりと周囲を見渡した。そこは、自分の部屋ではなかった。魔姫の部屋でもない。全く見覚えのない場所だった。

「なんだよ、ここ……」

まさに『夢の国』に居るかのような気分だ。部屋の中央には円形の大きなベッドが鎮座し、その形をなぞるようにメリーゴーランドの馬がゆっくりと回っている。天井にはシャンデリアのような照明が吊り下げられていた。扉がなく、そのまま地続きの右の部屋にはテレビのバラエティ番組ぐらいでしか目にしたことのないSM器具が並べられ、左の部屋は薄いカーテンの向こうに白いバスタブが見えた。

「私だって何だか知りたいよ。この部屋ってまるで……」

そう言いかけた彼女の言葉を待っていたかのように、天井から白と黒の物体が振ってきた。

「うわっ!」
思わず飛び退くと、その物体がむくりと顔を上げた。

「そんなに驚くなんて酷いなあ。そろそろ慣れてくれたって良いじゃない」
「モノクマ!? て、テメー何しに来やがった!」

不意のことに声を上げてしまった恥ずかしさを隠すように、百田はモノクマへ声を張り上げた。そんな百田を気にもとめずにモノクマは飄々と喋りだす。

「ボクはマニュアル通りキミに声掛けたんだけどね。全然起きてくれないから、イライラして思わず連れてきちゃったよ。ついでにカノジョもね」
「何……? 百田があんたの思うようにならなかったからって、私はとばっちり受けたってわけ?」

殺意を隠さない魔姫も物ともせずに、意地悪い笑みを浮かべてマスコットは言葉を続けた。

「キミを選んだのは、キミ自身のためだよ。うぷぷ……それに面白くなりそうだったし。ボクに感謝してほしいよね」
「んなことは良い。ここは一体どこなんだ?」

痺れを切らした百田が問うと、モノクマはあっけらかんとして答えた。

「ラブアパートだよ。今から二人にはここでセックスしてもらいま~す!」
「……は?」

あまりにも唐突で直接的な言葉に、百田と魔姫は言葉を失った。

「いやあ、ちょっと生々しすぎたかなあ。愛を語らってもらいま~す、くらいにすればよかったかなあ。まあ、そのままズバッと言い切ったほうがわかりやすくて良いよね。というわけで、今から百田くんと春川さんはセックスするまでこの部屋から出られません!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て! ハルマキとせ、せ、せ……ってどういうことだ!?」
「だから、さっき言ったとおりだよ。キミも春川さんもセックスするまではこの場所から出ることは出来ないってわけ。本当ならここはお互いの妄想が具現化する夢の世界って設定なんだけど、全部が全部そんな調子だとボクも飽きちゃうからさあ」

モノクマはわけのわからないことを並べてニヤニヤと笑っている。突拍子のない事態に頭がついていかない。……いや、そもそもコイツの言うことは全て頭がついていかない事柄ばかりなのだが。

「あっ、別にずっと外に出ずにこのまま二人で過ごすって選択もありと言えばありだけど、学級裁判が始まっても二人は参加できないわけだから『生存者は必ず参加』の校則に違反しちゃうよね。校則は絶対だからもし参加できなかったら……」
「く、くっそ……汚えぞ!」

モノクマは愉快そうに笑うと、ベッドに飛び乗って二、三度跳ねた。

「それでは百田くんに春川さん、素敵な夜をお楽しみください。うぷ……うぷぷぷぷ……」

いつものようにクルリと踵を返したかと思うと、もうそこにモノクマは居なかった。
まだ頭が混乱している。あまりに一方的で、あまりに理不尽だ。箱の中に男女を入れ、性行為をしなければ外に出さないなど。

「ああ、えっと……ハルマキ、あんなヤツの言うこと真に受けんじゃねえぞ。きっとどっかに抜け出す方法があるだろ」
「……この敷地からの唯一の出口だって、簡単じゃなかったでしょ? モノクマが出してきた条件以外に抜け道なんて、用意してないか、あるとしても相当意地の悪い妨害があるんじゃない。きっと」
「それでも、だ! あいつの言うことなんて素直に聞いてたまるか! いいから探そうぜ」
「…………。……わかった」

百田の言葉に、魔姫は渋々頷いた。しかし、二人で部屋を隅から隅まで調べてみたものの、魔姫の言うとおりだった。当然ながら入り口のドアは鍵がかかっていて、勢い良く体当たりしても微塵も動かなかった。浴槽の近くにあった通気口も人が入れる大きさではなく、覗き込んでも真っ暗で助けを求めて声を上げても、深淵に吸い込まれていくばかりだ。そして、これだけ大きな部屋にも関わらず、窓は一つもない。

「くそ……マジで一つも出口ねえのかよ」

そう言って、百田はどっかりとベッドに腰を掛けた。そのマットレスは、寄宿舎のものとは違って驚くほど柔らかく、質の良いものだった。隣に魔姫の腰も沈んだ。

「だから言ったじゃない。……方法なんて一つしかないんだよ」
「ハルマキ! 一つったって……」
「私は、あんたなら……良いよ」

その言葉に百田はドキッとした。彼女の瞳はまっすぐ自分を見ていた。

「な、何言ってんだよ、ハルマキ! じょ、冗談だろ?」
「……こんなときに冗談なんて言うわけないじゃん」
「だっ、だだっ、だってよ。そりゃあ、お前その……っ、わかってんのかよ、その方法って……」
「すれば……いいんでしょ」

今度はかあっと顔が赤くなるのが自分でわかった。モノクマの言った、外に出るための唯一の方法。それは、体を重ねることだ。今この場で魔姫と。

「だっ、だから、女がそう簡単に……っ」
「簡単じゃないって!」

百田の言葉を遮るように、魔姫が声を張り上げた。そこで初めて、彼女の体が小刻みに震えていることに気がつく。

「私だって……心臓が割れそうだよ。こんなことになるなんて思わなかったから」
「ハルマキ……」
「あんたなら……嫌じゃない。こっ、これ以上言わす気……? 私の言ってること、わからない?」

彼女は、百田にとって特に信頼する仲間の一人だ。それは変わらないし、揺るがない。だからこそ、自分で気がつかない振りをしていた。彼女に対して、それ以上の感情を抱いている自分に。デスゲームという、非日常の中で抱いたこの想いは本物なのかどうかさえ、不確定な代物だ。いや、本物なのにそうでないと必死に思い込んでいた。こんな状況で、恋だなんて。

「……バカだな、ハルマキ」
「あんたにだけは言われたくない」

お互いに小さく笑う。もう、迷ったりしない。
自分の手を、スカートの上で震える彼女の手へと伸ばした。上からそっと重ねてから近づくと、額と額をすり寄せた。

「……この部屋から出られねえから言うんじゃねえぞ。これは、オレの本当の気持ちだ」
「なんでもいいよ……早くして」

そう言いながら、魔姫は頬を染めている。彼女にとって『なんでもいい』わけではない、ということだ。体中の脈という脈がドクドクと波打っている。落ち着けるように、百田は深呼吸をした。

「……好きだぜ、ハルマキ。そういう、素直じゃないところも全部な」
口に出してみて、一層恥ずかしくなって思わず顔をそむけた。鼓動だって全然落ち着く様子がない。
「百田……」

名前を呼ばれてようやく視線を彼女に戻した。魔姫は普段冷静な彼女らしくなく、ポカンと口を開けて百田を見ていた。

「なっ、なんだよ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」
「別に……。あっ、あんたからそう言われるなんて思ってもみなかったから……」
「そ、そりゃあ、そこはっきりしとかなきゃな。オレは女なら誰でも良いなんて男じゃねえぞ」
「わかってる。でも……私なんか誰からも相手にされないって思って……っ」

言い終わらないうちに、百田は魔姫を抱きしめた。

「言うなよ、そんなこと。わかるだろ、どんだけオレがお前にドキドキしてるか。宇宙に轟く百田解斗が情けねえったらねえ」
「百田……」
「モノクマの手のひらに転がされて腹が立つけどよ、その……いいか」
「……さっきからずっと、いいって言ってる」

百田の背中に、魔姫の腕が回された。途端に嬉しくなって、自分の腕にも力が入る。
少し体を離して、お互いに赤い顔でお互いを見つめた。魔姫がそっと目を閉じたのを見て、自分もゆっくりと目を閉じた。唇を重ねただけのぎこちないキス。それが何かのスイッチになって、もっと彼女の深いところを攻めたくなった。

「んんっ、ふっ……!」

彼女の唇を、舌でゆるりと撫でる。驚いて空いた口にそっとそれを差し入れた。戸惑う彼女の舌を捉えると、もう夢中だった。舌を絡めるたびに頭が真っ白になりそうになる。吐息と吐息が混じって、彼女の唇から伝う唾液がどちらのものかわからなくなって。

「ハルマキ……」

掠れた声は、彼女の中へと消えていく。彼女の自分を呼ぶ声も、自分の中へと消えていく。
少し力を入れると、驚くほど簡単に魔姫の体がベッドへと倒れた。百田も覆いかぶさるように続く。
ちゅっと音を立てて唇を離す。普段は陶器のように白い彼女の肌にはうっすらと紅が浮かび、潤んだ瞳が百田を見上げていた。堪らなく愛しかった。

「ごめんな。オレ、経験ないからあまりうまく出来ねえかも」

言いながら、羽織っていた紫色の上着を脱ぎ捨てる。それはしばし宙を待って、絨毯の上に落ちた。

「わ、私だって初めて……だから」

また一つ、百田の胸が高鳴った。どうしてこうも彼女は、その通った声で、表情で自分のウィークポイントをついてくるんだろう。

「ありがとな。お前の初めてにオレを選んでくれてよ」
「そ、そういうのは言わなくていい!」

軽く胸板を小突かれた。そんな仕草ですら、可愛くて仕方がない。彼女の頭を撫でて、その長い髪をそっと掬い、口づけた。

「綺麗だな。白いシーツの上だから、余計に綺麗だ。こんなん見れてオレは幸せモンだよ」
「ば、ばか……。それは外の世界に出たら言いなよ」
「ははっ、そうだな」

百田は再び魔姫の頬に手を添え、今度は首筋にキスを落とした。

「んっ……」

ピクリと彼女の体が跳ねる。反応に心が躍る。セーラー服の上着を下から一気に脱がせようとして、魔姫に制された。

「……こことここ、外さないと脱げないよ」
「お、おう……」

百田が手を離すと、魔姫は胸元の内襟を外し、脇のファスナーを上へとあげた。

「はー。ンな構造になってんだな、初めて知った」
「逆に知ってたらちょっと引く」

そう言って、魔姫は手を止めて百田を見上げたあと、戸惑うように視線を揺らした。

「……い、いいよ」
「あ?」

言葉の意図がわからず、聞き返すと彼女は恥ずかしそうに身を捩らせた。

「ぬ……脱がせてくれるんでしょ?」
「お、おう!」

もう一度彼女の制服に手をかける。ゆっくりと上へ押し上げると高揚した肌と白いシンプルな下着に包まれた双丘が現れた。思わずゴクリと生唾を飲み込む。と、同時にふっと灯りが落ち、間接照明のような淡い光が二人を照らし始めた。これもモノクマによる演出なのだろうか? そうであるなら、今二人がしようとしている行為もどこかから見られているということだ。

「本当、趣味悪いなモノクマのやつ」

悪態をついてから彼女へと向き直る。薄ら闇に見える魔姫は自分とは違い、少しホッとしているような気がした。

「あっ……!」

柔らかな胸を下着の上から触れる。軽く握って力を抜いてを繰り返す度、彼女の押し殺した声が漏れた。いつもの彼女からは決して聞けるはずのない艶めかしい声音に自分の中から欲望がムクムクと湧き上がる。

「ハルマキ……もっと聞かせてくれ」
「ばっ、そんっ、なの……っ、ムリ……ッ!」

拒む言葉すら、背筋がゾクゾクする。なんて言ったら、すぐ『殺されたいの?』と返ってくるだろうか。下着を上にずらして、百田は彼女の小さな蕾を摘む。

「あっ、ああっ……!」

コリコリと弄べば、彼女は大きく仰け反った。堪らず、もう片方の乳房に吸い付いた。自分の感情の赴くままに舌を這わせる。彼女の両手が自分の頭を抱えるように降りてきて、この行為は受け入れられたのだと認識した。

「百……ッ、田、あっ、んんっ……」

感じている。ハルマキが、感じてくれている。喘ぎ声を上げて、自分に身を委ねながら。

「可愛い……ハルマキ、めちゃくちゃ可愛いぜ」
「言わな、いでっ、私……おかしくなるっ」

彼女の熱い吐息が自分の肌に触れて、一層体が熱くなった。そして、魔姫のスカートから伸びる足を下から撫で上げる。甘い声が彼女の唇からまた漏れた。
足の付根にたどり着いた百田の手は、彼女の中心にそっと触れた。ビクビクと体を震わせた魔姫に優しく口づけて、ショーツの上からつつ……っとその場所を指で擦る。初めて触れたというのに、そこは既に濡れていた。指の腹で軽く押しやると、ぐちゅっといやらしい音を立て、より湿り気を帯びたように感じる。

「ハルマキ、聞こえるか? すげえやらしい音してんぞ」
「もっ……だから、言わないでって……ッ」

素早く上下にそこを擦る。すると、百田を抱きしめる魔姫の腕に力が込められた。

(本当、たまらねえ……)
「あっ、やっ、百田……ッ!」

百田はショーツのクロッチの横から奥へと進み入り、彼女の秘部に直接触れた。想像以上に濡れそぼったそこは熱く、そして少しの衝撃で壊れてしまいそうなほど柔らかだ。

「ああっ! やっ、ああっ、んんっ、うっ、あっ」

核を少しなぞっただけで、大きく身を捩らせる魔姫。そのまま左右に細かく撫でると、最早我慢できないとでも言うように喘ぐ。トロリと蜜が流れ落ちるその壺に中指を差し入れ、ゆっくりほぐすように動かすと、さらにそれは強くなった。これほど彼女が乱れるなんて、百田は思ってもみなかった。しかも、自分の下で、自分の愛撫によって。モノクマにお膳立てされ、さらにこんな彼女の姿を見せ続けるのが腹立たしいほどだ。

「ハルマキ……ッ!」
「んんぅっ、ももっ……ん、んんっ……」

しゃぶりつくようにキスをした。色めく彼女を、愛らしいほど艷やかな声を、全て自分の中に飲み込んでしまいたかった。ズボンの下の自身が、痛いほど主張している。それでも、この彼女の姿を、その全てを喰らい尽くしてしまいたかった。
魔姫がビクビクと痙攣して、百田はようやく唇を離した。
肩で息をする魔姫が、もう一度ぎゅっと百田を抱きしめる。彼女の肌に玉のように浮かんだ汗が、じわりと百田のシャツを濡らした。

「お願い、百田。私……もう……」
「……ああ」

彼女の言葉に応じて、百田はようやくズボンのファスナーに手を伸ばす。はち切れんばかりに大きくなったそれは、下着をおろすと溢れるように飛び出した。硬く、熱く反り立っている。
辛うじて残っていた理性で、辺りに避妊具がないか目で探す。そしてようやく、先程抜け道を探すために散々調査したのにそれらしい物を目にしなかったことを思い出した。しばし考えあぐねたが、これもモノクマの意図なのだろう。

「あんたならいいって、言ったでしょ」

百田の迷いを察してか、魔姫が口を開いた。

「……私は孤児だったけど、もし私とあんたとの間で子どもが出来たって、あんたはずっと居てくれるでしょう?」

いや、宇宙に行くんだったっけ、と冗談交じりに付け加えて優しく笑う。

「あんたはそういう男だからさ」
「ハルマキ……」

これは、彼女からの信頼だ。百田という人間を信じてくれている。
……生きたい。生きてこの場所を出て、夢を叶えて、魔姫と生活を共にしてずっと隣で過ごしたい。不意に度々起こる吐血が頭を過ぎる。それでも。生きて、この狂った場所から出ることができたなら。彼女と一緒なら、乗り越えていけるかもしれない。

「ああ。ずっと……一緒だ」

そう言って、百田はクロッチの脇から自身の先を彼女の秘部に宛てがった。彼女に負担をできるだけかけないように、ゆっくりと押し入れていく。きつく、熱い彼女の蜜壺。少し気を抜いたら、一瞬で意識を飛ばしてしまいそうなほどの、今までに味わったことのない感触だった。

「百田っ……!」

痛みに耐える彼女の唇に、キスを落とした。たった少しでも不安を拭えたらと思った。ぎこちない動きで応えてくれる彼女の舌をゆっくりと味わう。自分だけこんなにいい思いをしていいのだろうか、なんて弱気な考えが胸に渦巻いた。

「……余計なこと考えた?」

急に唇を離して魔姫が問いかけた。自分の考えていることはお見通しのようだった。

「私は……ッ、嬉しいんだから。あんたと、こうっ、してるの……」
「……ありがとうな、ハルマキ」

頬と頬を擦り付ける。一つ深呼吸して、ようやく奥まで自身を収めた。

「全部入った……。わかるか? オレ達、一つになってるんだぜ」
「……もう。ホント、デリカシーがあるんだかないんだか」

彼女の口元が笑っている。プチュっと音を立てて軽く口づけた。

「動いても……大丈夫か?」

聞けば、少し視線を反らしてコクンと頷いた。それを合図に、百田は腰を一度引き、彼女へと打ち付けた。ぐちゅ、ぬちゅっと卑猥な音が部屋にこだまする。呼応するように百田の吐息が重なり、次第に魔姫の声も続いた。

「はっ、あっ、あっ、んんっ、うっ」
「ハルマキ……ッ、ハルマキ……!」

彼女の足を抱えて、そして今度は座って彼女を下から攻めて。魔姫の長い黒髪が、二つの乳房が、百田の動きに合わせて飛び跳ねる。それはひどく扇情的な光景だった。

「あっ、百田ッ、百、田ぁッ」

名前を呼ばれる度、強く強く抱きしめる。愛おしくて、たった一ミリも離れたくなくて。

「ふっ、くっ……、っ……!」

彼女の奥でビクビクと震えた百田の雄はその欲望を白濁に変えて迸った。その後か先か、魔姫も体を大きくしならせて息を吐く。二人の荒い呼吸が響く部屋で、カチリと鍵の外れる音がした。

次に目を覚ましたのは、寄宿舎の自分の部屋だった。強い眠気に朦朧としながら、朝の放送を意識の何処かで聞いていた。

「夢……だったのか?」

身なりはそれなりにきちんとしていたが、妙な疲労感がまだ体に残っている。ハッとして身を起こし、自身へと手を伸ばしたものの夢精した様子はなく、安堵の息を漏らしてまたベッドに横になった。

「いやあ、ゆうべはお楽しみでしたね!」
「どわああっ!?」

枕元で突然モノクマの声がし、百田は思わず跳ね起きてベッドから墜落した。
声を掛けた主は、ベッドの向こう側で相変わらずの意地悪い笑みを浮かべている。

「夢精せずにホッと胸を撫で下ろしている百田くんに朗報です! なんと! 昨日の一件は夢ではなかったので~す! うひょー、童貞卒業おめでとうっ!」
「なっ、ななっ……なっ……!」

言葉が出てこずに口をパクパクしている百田に、モノクマは満足そうに高笑いした。

「初の試みだったけど、いやあ、想像以上に感動的だったね! ボクは途中で涙が止まらなかったよ、もちろん嘘だけどね」
「て、テメー。やっぱりどっかから覗いてやがったな」

百田の怒りはお構いなしに、モノクマはハアハアと熱い息を吐き出した。

「美しいなあ。絶望的な状況で外への希望を求めて将来を語り合う男女……それを更に絶望に陥れてあげるのがボクの役目なんだ」
「……相変わらず、胸クソ悪いことばかり言いやがる」
「うぷぷ……。ボクにとっては最高の褒め言葉だよ」

舌打ちすると、モノクマは一層嬉しそうに答えた。

「あっ、それからラブアパートでの出来事は夢の中の話で次の日には皆忘れちゃうって設定もあったんだけど、今回は特別に春川さんもちゃーんと覚えてるから、せいぜい愛を紡いでくださいね。そうすればその後に来る絶望がもっともっと辛いものになるはずだからね」
「はっ!? ハルマキも覚えてるって……」
「うぷぷ……うぷぷぷぷ……」

取ってつけたように説明をして、モノクマはクルリと回って姿を消した。
彼女も覚えている。昨日のことを。昨日の夢のような出来事は、現実に起きていて自分は彼女と……。

「宇宙に轟く百田解斗ッ! 昨日の想いに嘘なんかねえ!」

百田はそう叫んで気合を入れ直す。こっ恥ずかしさはある。だが、自分の気持ちと向き合ってもう隠すことはしないと誓った彼女への気持ちは本物だ。

「うっし!」

シャワーを浴びて着替えたら、彼女の部屋へ向かおう。そして今度はモノクマのお膳立てなしに真正面から、自分の想いを伝えよう。
モノクマの言う『その後の絶望』なんて関係ない。自分たちは、生きて外の世界へと出ていくのだから。

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