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空色メタル。【巽 完二×白鐘直斗】

「……巽くん、怒ってる……よなあ」

鞄から取り出した懐中時計を眺めてため息をつく。
時間は、1時を少し過ぎたところだ。
こんなに遅くなるつもりはなかったのに。
タクシーに揺られながら、目深に被った帽子を正す。
運転手に告げた目的地は、ホテル・はまぐり。
以前、修学旅行でも訪れた場所で、今回、この観光シーズンの中、完二がなんとか予約を取り付けた場所、だった。

『辰巳ポートアイランドに行かねえか?』

そう言って、誘ってくれたのは完二だった。
修学旅行のときは、あまり一緒にいられなかったから、なんて彼は言っていたが、初めて行く二人だけの“お泊まりデート”には、十分すぎる理由だ。

「……なのに、僕は……」

せっかくの機会だったのに。
仕事とデート……迷ったあげく、仕事を取ってしまったのは自分だ。
完二からの後押しもあったのだけれど。

『い……行ってこいよ。お前が来るまで、ブラブラしってっからよ。気合い入れていってこい!』

辰巳ポートアイランドへ向かう列車の中で、よもや事件発生の連絡が来るとは。
仕方のないこと……と自分に言い聞かせていたが、完二の想いを踏みにじったのは事実だ。
彼の笑顔を思い出すと胸が痛む。
気を取り直すように、すっかり景色が変わってしまった街中を、直斗は窓から眺めた。
色とりどりの明かりが点々と伺える様は、ここは稲羽のような田舎ではなく、都会なのだと強く実感させられる。
完二と付き合って、どれくらい経つだろう。
もう決して短いとは言えない期間になっているけれど、恋人らしいことはほとんどしていない。

(……き、キスだって、ついこの間……)
「……ここ、曲がったとこですね」
「あっ、はいっ」

運転手の声に我に返る。
なんだか頭の中をのぞかれたように思えて赤面した。
運賃を払い、逃げるようにタクシーを降りる。
ホテル・はまぐりは、相変わらず独特な佇まいでそこに建っていた。
入りづらい雰囲気は健在だ。

「……っと。早く入らなきゃ」

完二はさすがにもう寝ているだろうか。
ロビーを抜け、都会のホテルにしては小さなエレベーターに乗り込んだ。

静かに、部屋のドアを開ける。
それでも錆びた蝶番が細く長い音を響かせた。
室内照明は落とされていたが、ベッド脇のライトだけがオレンジ色の暖かい光を放っている。
帽子を取って、音を立てないように中へと進む。
……と。

「遅かったじゃねえか」

声がして、肩をびくりと震わせる。
すぐそばのソファから物音がして、大きな体が起き上がった。━━━━完二だ。

「ご、ごめん。ちょっと長引いてしまって……」

なんだか目が合わせられず、直斗は咄嗟に下を向いた。

(ちゃんと謝らないと……)

そう思うのに、なんだ言葉が見つからない。
まごまごするうちに、完二は立ち上がって自分の目の前へとやってくる。

「あ、あの……」
「あ?」

完二の視線と自分のそれが重なる。
それがにらまれているように思えて━━いや、後ろめたさがそう見せたのかもしれないが━━目をそらした。

「お、お風呂入ってくる!」

そう叫ぶと、直斗は自分の帽子を彼へと押し付け、備え付けのバスルームに飛び込み、後ろ手で扉を閉める。
呼吸を整えながら、そのまま背をもたれてずるずると座り込む。
照明が何度か瞬き、あたりを明るくした。

「最低……だ」

待っていてくれてありがとう、とも、一日を無駄にさせてごめんなさい、ともしっかり言えていない。
一番に言わなくてはいけなかったこと。
唇を噛む。
自分はなんて不器用なのだろう。
完二はこの一日、どう感じていたのだろう。
先ほどの自分の行動には?
どちらにしても、呆れられても仕方ない出来事ばかりだ。

「……ん?」

ふと、妙な違和感を感じる。
冷えきっていると思っていた浴室内の空気が暖かい。
先に完二が使ったと考えても、もうこんな時間だ。
暖房は設置されていないはずだし、以前来たときには、浴槽に保温機能などはついていなかった。
すぐそばにある浴槽に手を浸す。

「……あったかい……」

完二が整えておいてくれたのだろうか。
いつ帰るともわからない自分のために。そう思うと胸が苦しくなった。
仕事だからと、大切な君の約束を違えた、自分のために。
今日という日を、彼はどんな気持ちで待っていてくれただろう。
どんな気持ちで自分を誘い出してくれただろう。
考えれば考えるほど、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「直斗?」

背後からの声に、直斗ははっとして振り返った。
完二だ。浴室の外から自分に呼びかけている。

「……ど、どうしました?」

やっと、そう返す。声が震えてしまいそうでなんだか怖い。

「あのよ。今日は……悪かったな。お前が仕事持ってるの知ってんのに、誘っちまって、さ」

どくん、と心臓がはねた。

(巽くんが、僕に謝罪を……?)

どうして。

「その、お前は気に病む必要はねぇからな」

彼が謝ることなど何もないのに。

「てめえは自分の役割をしっかり果たせ」

役割。君との約束を違えて?

「……わりぃな」

そんなの……。

「違うよ! 巽くん!!」
「!?」

直斗は、勢いよくバスルームの扉を開け、面食らった顔をした完二の胸ぐらを両手でつかんだ。

「っ!! あぶな……っ!」
「わっ」

突然のことに完二はバランスを崩して直斗へと倒れ込む。
その体格差に、小柄な直斗が耐えられるはずもない。

(! 床と接触する……!)

衝撃に備え、直斗は目をつむる。
瞬間。

「のわっ! ……っつーッ」

予想していた痛みとは裏腹の感触に直斗は目を開ける。
すると。

「ひゃっ!?」

背中から冷たい雨が降り注いだ。
シャワーのようだ。
再び閉じたまぶたを恐る恐る開く。
見ると、浴槽を背に完二が自分を抱きしめる体制で座り込んでいた。
どうやら、直斗をかばいながら倒れたようだ。
直斗の頭には守るように、完二の右手が添えられている。
倒れ込んだそのとき、バルブも捻られてしまったのだろう。
みるみるうちに水が二人を浸食していく。
血が上った頭も急速に冷えていった。

「あっ、え、えっと、ごめん!」

我に返って、飛び退こうとする。
それを制するように完二が強く直斗を抱きしめた。

「た、つみくん?」
「……お前があんなにつっかかってくんの、珍しいからよ」

そう言って、完二は直斗の頭をガシガシと撫でた。

「どっかいてえとこはねぇか」
「う、うん……」

完二は左手をしばし宙に巡らせ、バルブを閉める。
水は止まったが、既に直斗も完二もずぶ濡れだ。

「……ごめん、巽くん」
「あ?」

直斗は彼の胸の上で小さく拳を握った。

「僕は君との約束をやぶってしまいました。それについて謝りもせず、やっと決心がついたと思えば、この有様」

強く唇を噛む。

「……君を、僕は振り回してばっかりで、それなのに君は僕に十分すぎるほど気を使ってくれて……」

目の辺りがじんと熱くなる。
涙がこぼれそうで、それを見られたくなくて、顔を伏せた。

「どうしてそんなに……こんな僕を気遣ってくれるんですか」

頭のうえで、大きなため息が聞こえた。
やはり呆れられてしまったのだろうか。自然と身を小さくなる。

「……言わねえとわかんねぇのか」
「えっ?」

思わぬ返答に、直斗は顔をあげる。
その頬に、両手が添えられた。

「お、お前のことが、すっ、好きだからだっつの。……何度も言わせんじゃねえ」

完二は顔を真っ赤にして、それでもまっすぐ直斗を見た。
さきほどのシャワーのせいで、普段しっかりと整えられた髪が、水分を含んで彼の額に張りついている。

「だ、だからっ、お前には無理させたくねぇし、探偵の仕事もぶんどりたくねぇし。そういう直斗が、俺はいいと思ってる、から」

直斗は目をぱちくりさせた。
予測していなかった答えに言葉が出てこない。
完二はしばし迷ったあげく、よしっ、と小さくつぶやいた。

「……しても、いいか」
「え?」
「……キスっ、してもいい、か?」
「へっ……!?」

情けない声が出た。
完二と同様に自分の顔も赤く染まっていく。

「そ、そんな! い、いきなり……!」
「ワリィ。もう、待てねえ」
「こ、心の準備がっ!」
「そんなん、してもしなくても関係ねえ」
「巽、くん」
「……直斗」

ゆっくりと完二の顔が近づく。
胸の高鳴りを感じながら、直斗は目を閉じた。
すぐに訪れる柔らかい感触。
キスをしている。自分と、完二が。

「んっ……」

ぐぐっと、身を引き寄せられる。
完二の舌が、かすかに自分の唇に触れる。
開け、ということだろうか。

「んんっ……!?」

少し口を開けた瞬間、完二の舌が侵入し、自分の舌を絡めとる。
どうすればよいのかわからず、ただ求められるがまま舌を動かした。

「んんっ、んふっ、んんぅ……」

もっと、もっと。
完二の心の声が聞こえるようだった。
お互いの熱い呼吸を、お互いに求め合って、その熱はどんどんと増して。

(おかしく……なりそうだ)

どんどん頭がぼうっとしてくる。
角度を変えるたび、水分を含んだ衣服が体にまとわりついてくる。
熱を帯びた肌に、それはなんだか心地よかった。

「……お前、かわい、すぎんだろ」

唇が離れると、完二はそうつぶやいて、直斗を強く抱きしめた。
背中に這わせられた指先から、直斗への愛しい想いが伝わってくる。

「そんなこと……ないよ」

直斗は、自分の顔を彼の肩にすりつけて、それに答えた。
そっと体が離され、同時に1回、2回とついばむようなキスをされる。

「あ、あのよ。お前が……いやじゃなかったらその……」

完二がもごもごと口ごもる。

「続き……してもいいか?」

続き。
その言葉に、直斗の心臓はひときわ大きく高鳴った。
完二ははっきりとは言わなかったけれど、意味は理解できる。
……そういうこと、だ。
少しの間考えを巡らせて、覚悟を決める。
大きく息を吸い込んだ。

「……い……いい、くっしゅんッ」

「……あ?」

一瞬、直斗には時が止まったかのように思えた。

(ななな、なんで肝心なところで……!)

すぐに恥ずかしさに頭を支配される。
なんて間が悪いんだろう。

「……わりい。このままだと風邪ひいちまうな」

そう言って、完二は立ち上がり、湯船に手を差し入れて温度を確認した。

「直斗、先風呂は入れ。体壊したらこまんだろ」
「え、えと、あの……」

先ほどまでの空気が、徐々に消えていくのがわかった。
あの、頭がくらくらするほどの夢のような時間はもう終わってしまったのだ。
なんだかひどく、寂しく思えた。

「俺は後からはいっからよ。でもまあ、ゆっくりしろよ」

完二がバスルームの扉に手をかける。
嫌だ。
そう思って、彼へと手を伸ばした。

「直斗?」
「……行かないで」

声が震えた。

「一緒にいて……ほしいです」

彼の背に顔を押し付けて。掴んだシャツを握りしめて。
少しの沈黙の後、完二は一言、わかったと答えた。

そして。
直斗は、完二に後ろから抱きすくめられるようなかたちで浴槽に浸かっていた。
なんだか気まずくて、しゃべりにくい。
完二も視線をそらしているようだし、自分も後ろに意識が行かないようにしている。
身じろぎするたびにする、かすかな水音にさえ、鼓動は高鳴った。

(なんだか……変な感じだ)

そんな状態でいて、心には安心感も同居している。
他人に見られたくないもののひとつである女性としての自分がそこにいるのに、どうしてこんな心地になるのかよくわからない。

「えっ……!?」

大きく湯船が動いた。
振り返る間もなく、完二に強く抱きしめられる。

「……だめだ、限界みてぇだ」

体格に似合わないか細い声が聞こえる。
と、同時に背後に何か違和感を覚えた。

(こ、これ……なんだろう……?)

お尻に何かが触れている。初めての感触だ。固くて……熱くて。

「もう一度聞くぞ。……つ、続き、していいか?」
「ふ……んんっ!?」

答える間もなく、顔を大きな手で抱えられ完二に口を封じられた。
再び、彼の舌が自分へと進み入る。

「んんっ、ふっ……!」

心なしか、先ほどよりも激しい。
直斗のすべてを味わうかのように、舌がうごめく。

「んっ!?」

完二の手が、直斗の豊かな胸へとのびた。
少し遠慮がちに動いていた指先が、小さな突起にたどり着くと、先端をキュッとつまんだ。
しびれるような感覚に、直斗は身を震わせる。

「あっ……、はぁっ……」

それでも、完二の指は止まらない。
円を描くように沿わせ、つまみ、弄ぶ。
声を上げそうになるたびに、とろけるようなキスをされる。

「……こっち……むけ」

少し躊躇して、けれど言われるがままに、彼へと向き直る。
自然と鍛えられた肉体に目がいって、また恥ずかしくなって視線を反らした。

「……それじゃ、見えねえだろ」

無意識に胸を隠していた腕をどかされる。

「ひゃっ……!?」

それに慌てているうち、思わぬ場所に思わぬ感触がして、声が漏れた。
見れば、完二が自分の胸の突起に舌を這わせている。
左手ではもう片方を撫でていた。

「あっ……ん、んんっ」

こんな感覚、初めてだ。そう、直斗は思った。
気持ちよすぎて、ほかに何も考えられない。
身をよじると、浴槽からお湯が溢れ、水音がこだまする。
それもまた、直斗の感情を高ぶらせる。

「やっ……やだ、巽、くん……っ」
「嫌? そうは見えねえけどな」
「あっ、ああっ!」

完二が強く先端を吸うと、直斗の喘声が響いた。

「直斗……可愛い……可愛いぜ」
「あっ、ひゃあっ……そんな……とこっ、んんっ!?」

完二の手が、直斗の秘部へとのびる。
ビリッと、電流が体を走った。

「気持ち……いいのか? 直斗」

反応のあった場所を、無骨な指がゆるゆると撫でる。

「う、あ、ああっ、あ!」
「すげえ、ヌルヌルしてっぜ。ここ……」
「言わな、いで……」

完二が小刻みに指を震わせるたび、今までに感じたことのない感情が押し寄せる。
声を抑えようとするたびあらがえず、狭い室内に声が反響した。

「……立て、直斗」
「へ……?」

促されるまま、立ち上がる。すると。

「あっ、やああああっ、あっ!?」

完二の舌が、直斗の敏感なその場所を攻める。
逃げようとしても、足をしっかり抑えられていて動くことができない。
指とは違う、独特の動きに翻弄される。
ぐちゅぐちゅ、という自分の愛液の音に気がおかしくなりそうだ。

「たつ、みくん! たつみ……くん……っ」

彼の名を呼ぶ。

「こわ、いよ……なんか、へん、んんんぅっ!」

何かが迫ってくる。
正体はわからない。

「あ、ああっ、ああああっ!」

ひときわ大きな喘ぎ声が漏れる。
ドクドクと、体中が脈打って熱を広げている。
直斗は力なく座り込んで、完二へと抱きついた。

「い……イッた……のか?」
「…………バカ」

恥ずかしさに顔を伏せる。
あんな声を上げて、気持ちよさに身を委ねて、なんだか自分じゃないみたいだ。

「な、なあ。直斗」
「なに……?」
「…………」
「巽くん?」
「……………………い、一旦、こっから出るぞ!!」
「え? って、ええええ!?」

ザバッと、勢いよく完二は立ち上がり、直斗を抱き上げる。
そして足早にバスルームを出ると、バスタオルで直斗を包み込んだ。

「えっ、あ、ちょ!」

声を挟む隙もなく、体全体を拭かれる。
そうしてすぐにそのまままた抱え上げられ、移動する。
おろされたのは、ベッドの上だ。

「い……入れっからな」
「へっ?」

見上げた完二の顔は先ほどよりも赤みを増していた。
水分を帯びた金色の髪は、重力に負けて垂れ下がっていて、なんだか、いつもの完二じゃないみたいでドキドキする。

「ふあっ」

またキスが降ってくる。
高揚感を呼び戻すように、音を立てて吸われる。
そうしながら、完二は直斗の頭上にある小棚に手を伸ばした。
そして、手早くそれを装着する。

「ほっ、本当に、入れんぞ?」
「う……、うん」

直斗の返事を合図に、完二は自分のソレを濡れそぼった莟へとあてがった。

「うっ……」

強烈な異物感に、直斗は顔をしかめた。

「……くっ、いてえか?」
「だい……じょ、ぶ……です」

まるで張り裂けてしまいそうなほどの痛み。
耐えるように、完二の首へと両手をまわす。

「も、少し……」
「うっ、あ、あっ」

ジリジリと、完二のモノが直斗の中へと進んでくる。
言いようのない圧迫感が直斗を支配する。

「た、つみ……くん、ぅっ」
「直斗……」

直斗を慰めるように、完二がキスをする。
舌を絡めるうちに、下半身への意識が薄れていくような気がした。

「……入ったぜ」
「ほん、とに?」

やっとの思いで声を出すと、完二は小さく頷いた。

「ひゃあっ!?」

再び、頭に電撃が走り、体がのけぞった。
完二の右手が、自分の最も敏感な部分に触れたせいだ。

「巽くん、それはもう……っ!」
「気持ちいいんだろ? これ」
「あっ、んあ、ああっ……!」

陰核を転がすように弄ばれ、また何も考えられなくなる。
そのまま、ゆっくりと完二の腰が動き始める。
先ほどまで受け入れることを拒んでいたはずのそこは、直斗の気持ちの高ぶりと共に甘い蜜に満たされていた。

「あっ、んふっ、あ、あっ」

痛みと受け取っていたものは快感へ変わり、直斗を攻め立てる。

「やっ、いっしょ、だめっ……だめえ!」

直斗の小さな芽を愛撫するその手は止まらない。
加えて、完二は直斗へ己の欲望を思いのままに打ち付ける。

「あっ、あっ、んん、あ、ああっ!」
「なお、と! 直斗、直斗……ッ!」

すがるように、完二の頬に両手を這わせる。
無我夢中で口づけた。

「ん、んん、はっ、あ、あ、あ……っ」
「ん、はぁ、なおと、直斗っ」
「たつ、み、く、も……だ、め……」
「俺、も……くっ……!」

熱いものが放たれたのをかすかに感じ取りながら、直斗は意識を手放した。

「…………」
「…………」

昼の辰巳ポートアイランド駅前。
電車を待つ二人の間には、沈黙があった。
寝不足と、少しの疲労感。
それを抜きにしても、二人の空気は重い。

「あの……っ!」
「あのよ……っ」

同時に声を上げて、またお互いに目をそらす。
どうしてこんなにも気まずいのだろう。

「……あの」
「お、おう」

まだ、面と向かえないけれど。

「……手、手を、つないでもいいでしょうか」
「……おう」

昨日までとは違う二人が、ここにいた。

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