home > text > > 狂い始めた歯車の下【結城秀康×お初】

狂い始めた歯車の下【結城秀康×お初】

(お初に婚約者、ねぇ…)

延暦寺の古ぼけた天井を見ながら、蒼鬼は溜め息をついた。
横を見れば、あの露出度の高い服を着た初が規則正しい寝息を立てている。
鼻の下が伸びるのを感じ、蒼鬼は慌てて天井に視線を戻した。

(なんだ、この感じ…)

胸が締め付けられたような、そんな感じだ。
思い起こせば確か、あの嫌味ったらしい宗矩に再度会ったときも同じような感覚 に陥った気がする。

(あいつがお初を「恋人」だと言ったとき…)

「秀康?」

名前を呼ばれ、声のしたほうを見る。
さっきまで寝ていた初が心配そうにこちらをみていた。

「眠れないの?」

鈴が鳴るような声だ。
この声が蒼鬼は好きだ。

「いや…起こしちまったかな」
「ううん。目が覚めただけ」

そうか、と言って蒼鬼は言葉が見つからず黙りこくってしまった。
まさかお前のことを考えてた、なんて言えるわけもない。
隙間風が二人の間をかける。
何かを言おうとして、躊躇って。
そんなことを何度も繰り返した。

「一緒に寝るの久しぶりね」

そう言って初は笑った。

「ん?……あ、あぁ。そうだな」

先程まで考えていたことがいたことだったので、蒼鬼は行きすぎた自分の考えを 無理矢理打ち消した。
そして、幼い頃を思い出す。
昔はいつだって初や茶々と一緒だった。
一緒にいろんなところを走り回って、一緒に遊んで、一緒に寝て。
こんな風に傍に居られるのは幾年ぶりだろうか。
秀吉を、その後ろに居るであろう三成を討つという重い戦いの中ではあるのだけ れど。

「……ねぇ、秀康」
「ん、なんだお初」
「もっと傍に行っても…いいかな」

ドキリと、秀康の胸が跳ねた。
どんどんと鼓動が早くなる。
あらぬ妄想が悶々と浮かぶ。
壁の隙間から差し込む月明かりに、初の肌が妖艶に浮かんでいた。

「あ、あぁ。いいぜっ」

声が上擦ったのを、そして背中に変な汗が流れたのを感じながら秀康は了承した 。
何だか変に緊張して初のほうを見ることが出来ず、かといって目が冴えてしまっ て瞼を閉じることも出来ず、秀康は天井のただ一点を見つめていた。
右胸に微かな重みを感じた。
初だった。
彼女は秀康に寄り添うような形で横になっている。

こんなとき、どうすれば良いのだろうか。
変に気だけが焦ってどうしようもない。
散々迷った挙句、秀康は初の背中に手を回し、更に自分へと密着させた。

「秀康…」

驚いたような初の声に秀康の心臓が一層早鐘を鳴らす。
やはり自分は彼女のことを愛しているのだと、自身の身体に思い知らされたよう で少し悔しい。
同時に、一人で考えていた疑問にも答えがつく。

―――あれは嫉妬だ。

初を別の男に渡すなど絶対嫌だ。
そんな想いが造り出した感情だ。
出来ることなら、このまま初を離したくないという気持ちで秀康は一杯になった 。

『お初の身体はイイぜぇ』

宗矩の声が脳裏に蘇る。
彼女の身体を、あの男は見たのだろうか。
触れたのだろうか。
然して幻魔蟲を身体に埋めたのだろうか。

「お初…っ」

彼女の背中を支える手に少し力を込めた。
彼女を手に入れたくて、けれど悲しませたくなくて。
どうすることも出来ないもどかしさが秀康を襲った。

「宗矩とは…どこまで」

回りくどく言葉を飾ることもできず、秀康は彼女に直球をぶつける。
彼女の瞳が大きく揺れた。

「ごめん…」

言ったことを後悔した。
良いのよと初は言い、力無く笑う。

「……何も。ただ幻魔蟲を埋め込まれただけよ」
「ホントか?」

思わず、秀康は初に覆い被さる形になった。
もう二人はあの頃の無垢な子供ではない。
男と女に成長し、成熟した。

共に戦うと誓った。
共に生きると誓った。
共に居ると誓った。

今日1日でいろんなことが起こった。
だから混乱しているのだろうか。
それでもいいと思った。
初は今、自分の腕の中に居る。

「好きだ…お初。お前を離したくねぇ」

絞り出すように声を出した。
長い間溜っていたものを全て吐き出すように。
何も告げずに豊臣を出たとき、きっともう初とは逢うことはないと思った。
けれど心のどこかで彼女が来てくれたらと願っていた。
敵として刃を交えた。
しかし彼女は、幻魔蟲に侵されるという危険を伴ってまで秀康を信じた。
信じてここまで来た。

「秀康…っ、もしそうならって思ってた。そうだったら私…わたし…ッ」

暗闇に慣れた目が、初の涙を捉えた。
鳴咽に耐えるように彼女は自分の口を手で塞ぐ。

「わたし…貴方と居たい。秀康…貴方と一緒に…ッ」

堪えられず、秀康は初に口づけた。
自分達は結ばれることはないと、きっとお互い頭のどこかでわかっている。
元々結ばれることのない運命だった。
天下統一を成し遂げた豊臣秀吉が豹変し、世の中が幻魔で溢れかえることがなか ったら。
お初は京極家へと嫁ぎ、秀康は今も義父である秀吉の元で戦乱の終わりを見たの かもしれない。
しかし定められていたはずの時は狂い始めている。
いや、とうに狂ってしまった。
決して叶うはずのない想いを抱いていた二人が、お互いの存在を確かめ合う。

接吻を何度も交わしながら、秀康は上衣の横から手を滑り込ませ、初の豊満な胸 を直に触る。

(な…なんだこの柔らかさ…! し…信じらんねえ)

自分の手の動きに合わせ形を変えるそれに、秀康は興奮を覚える。
空いた手を彼女の背に回し、結ばれた紐をほどけば、初の上半身が外気に触れた 。
酸素を求めるように、お互いの唇が離れる。
息の上がった二人のそれからは銀の糸がひき、緊張と興奮を高めさせた。

恥じるように初が自分の胸を隠そうとする。
けれどすでに秀康が彼女の胸をもてあそび始めていたので、それはあまり意味が なかった。

「やっ…やだ秀康。恥ずかしい…」

かすれるような初の言葉に、改めて何をしているのかを自覚して秀康は顔が熱く なるような気がした。

「そ、そんなこと言うなよ!……なんかこっちまで恥ずかしくなってきた」

言いながら秀康は、初の丘の頂点にある突起を緩く摘む。

「はぁ…んっ」

その艶っぽい声に初はおろか秀康まで羞恥を覚えた。
お互い頬を赤くし、それぞれ相手の顔をみやる。

「なんか…今のは一段とイヤラシかったですな。お初殿」
「…やだ…っ」

戸惑いながらも秀康はその突起を甘噛みした。
頭上では初の甘美な声が響く。
舌でゆっくりと舐めると声は更に艶を増した。
空いた左手で左胸を掴む。
然して揉みしだきながら、秀康はまるで赤子のように初の胸を堪能していた。

「あぁ…んぁっ…あっ」

痺れるような感覚に初は身を震わす。
ずっと想ってきた秀康とこんなことをするとは考えたことがなかった。
想いを伝えることさえ、躊躇していた自分だから。
幻魔蟲を隠すため、今日まで厚い着物の下に押し隠してきた身体は今、秀康の手 の中で興奮を高められている。
秀康の唾液で光る我が胸は、まるで自分のものではないかのようにいやらしく見 えた。

不意に、胸を堪能していたはずの秀康の手が下へと降りてきた。
肌を撫でるように、けれど行き先はただ一点のみだ。
戸惑いのあるその手の動きは、敏感になった肌を甘く刺激する。
初は出そうになる声を噛み殺した。

「声出してくれよ、お初。俺、聞きたいよ」
「あっ…んあっ!」

ちゅうっと音をたてて秀康は、初の突起を吸った。
赤子のようなその行為はこの場では感情を高める性行動でしかない。
耐えられず矯声を発した初の額の髪をかきあげて、秀康はそこにそっとくちづけ る。
初の腹部に置かれていた秀康の左手は、 彼女の腰に付けてあった甲冑を器用に外 した。
カシャンと金属音が静かに響き、彼女の身を隠すのは遂に、白い布一枚になった 。
秀康は二本の指で彼女の秘部に触れる。
グチュリと水分を含んだ感触に心臓の音が速まった。

(やばいな…。俺、これだけでイッちまいそう…)

秀康の触れた布地の部分から丸く染みが広がっていく。
恥ずかしさに初は顔を赤らめる。
秀康は彼女の布に手をかけた。
スルリと膝の部分まで下ろせば、反射的に初は足を閉じる。
月明かりに光る彼女の裸体は、どんなものより神秘的でどんなものよりも美しか った。

「お初。……綺麗だ」
「そんな……こと…っ」

自然に言葉が出た。
昼間、初が新しい衣装を着たとき気の利いた台詞などひとつも出なかった秀康だ ったが、彼にしては大胆だった今までの行為が感覚を麻痺させたのだろうか。

力を抜かせるように初の足を撫でながら、秀康の人差し指は彼女の露になった蕾 へと進む。
布越しではない、その柔らかさと暖かさにゴクリと唾を飲んだ。

「ああっ…んやっ…は…」

そのままゆっくりと蜜壷の中へと指を入れた。
折り曲げたりかきまわすことで、初の声にどんどん熱っぽさが増す。
快感に身をよじるその姿は、視覚を通じて秀康を刺激する。

(……お初ッ、そんなの見せられたらこっちはたまったもんじゃないぜ)

今にも自分の分身ははち切れてしまいそうだ。
既に外に出たいと秀康に訴えている。

「お初……いいか?」

ぼうっとし始めた頭で彼女に問いかける。
初は熱っぽい、潤んだ瞳で小さく頷いた。

手早く苦しそうにしていた自身を外気に触れさせる。
先走りの液が出ていることに少し情けなくなりながらも、秀康は初の蜜部にそれ をあてがう。
初に出来るだけ負担を与えないよう、ゆっくり挿入していく。
狭いその中は、包み込む全ての面から熱と圧力がかけられ、気を少し緩ませるだ けで達してしまいそうだ。

「くっ…お初…」

秀康は愛しいその名を呼んだ。
額ににじむ汗も、交わす吐息も全てひとつになったらいいと思った。
どちらからかもわからない、求めあったくちづけは一層深く、熱を帯びた。

「好きよ、秀康…。好き…」

囁かれるように告げられたその言葉に、切なさを感じた秀康はきつく初を抱きし める。

いつか離れること。
わかっている、酷な運命。
それでも二人は今、お互いの愛を確かめあった。

next
back

return to page top