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セーラー服の座敷わらし【桃城 武×橘 杏】

部活もない。
親もいない。
出かける予定もない。
俺、桃城武は退屈で仕方がない。
ダーツにも飽きて、体をそのままベッドに投げ出す。 

「……寝るか」

俺の意識はいとも簡単に遠のいた。

なんだか体が重い。
まどろみのなか、俺はそう思った。

「…モモシロくんがいいなー」

…まだ夢の中か?
女の子の声が聞こえる。

「でも、無理なんだよね…きっと」

何が無理なんだ?

俺が良いってどういうことなんだ?
俺はゆっくり目を開けた。

「うっ!」

顔の近くに顔があった。
じっと俺を見てる。 
長いまつげに、肩で切りそろえられた茶色の髪。
前髪を分けて止められたピン。
青い襟のセーラー服。

「…お前…誰?」

やっとのことでそう言うと、その娘が目を丸くした。

「私が……見えるの?」
「…見えるのって、こんだけ近くにいりゃあな。新手の空き巣か?」

その娘の顔がみるみるほころんでいく。

「ホント?本当に?!私が見えるの?」
「あ、あぁ…」
「じゃあ、モモシロくんでいいのね?嬉しいわ」
「えっ、のわっ」

彼女は勢いよく俺に抱きつく。
体に押しつけられた胸にドキッとした。
それほど俺はふつうの男子中学生ってわけで。

「あのー…、状況がよく分からないんスけど…」
「あっ、そうよね!ごめんなさいっ」

そう言って彼女は起きあがる。
俺も上半身を起こした。

「あたしは杏。この家の座敷わらしよ」
「…は?」

のっけからよくわかんねえ。

「だから、座敷わらしっ!どういうものか、だいたいわかるでしょ?」
「んー…。でもあれ妖怪だろ?」
「妖怪よ。人間じゃないの」

この娘――杏――は、
悲しそうに目を伏せた。

「あたしね、ずっとモモシロくんを見てきたの。モモシロくんのことならなんでも知ってる」
「なんでも?」
「うんっ!例えば、おへそのしたに三つ並んだほくろがあるとか、小学生の時、給食が少ないからお弁当作ってってお母さんにだだこねて結局その日学校行かなかったこととか」

俺は絶句した。
確かにそれは、他人が知るはずもない。
俺の近くに居なければ決して分からないことで。

「ね。信じてくれた?」

にこっと目を細めて微笑む杏に、俺の心臓は大きく脈打つ。

「あ、あぁ。信じてやるよ」

でも、セーラー服の座敷わらしって…そうそう居ないんじゃねえか?

「それでね。私、モモシロくんたちを見てるうちに人間になりたいって思うようになったの」
「人間に?」

「そう。私、私ね。妖怪なのに…モモシロくんのこと…」

杏の白い肌がほんのり赤く染まる。
そして少し視線を落とした。

「好きに…なっちゃったの…」

穏やかな風が窓から入り、薄黄緑のカーテンを揺らした。

「…だから、私人間になりたい。モモシロくんと…一緒に生きたいから…」

心臓が頭についているかのように、大きく鳴った。
初めて会ったのに、杏には何故か
懐かしいような想いを抱く。
ずっと前から知っていたような。

「…私を抱いて?」
「え…?」

杏は赤いネクタイをほどいた。

「人間になるためには、人間の誰かと寝なきゃダメなの。私を見ることが出来た人」

杏が俺の唇に口付けた。
全然嫌じゃなかった。
むしろ嬉しい気持ちにすらなった。
まるでずっと前から付き合ってきた恋人のように。

重ねるだけのキス。
柔らかいその唇にもっと触れたくて、今度は俺から口付けた。

「俺でいいのか?」
「モモシロくんじゃなきゃ…ダメ」

熱い吐息。
溶けそうなほど、甘ったるい雰囲気。
俺は杏のセーラー服の胸のボタンを外しながら、彼女の耳たぶを舐める。
俺は右手を杏の双胸へとのばした。

―――――……

「…これ、結構つらいもんだったのね」

「気持ちいいだけだと思ってただろ」

俺は自分の下にいる杏にそう言って笑った。

「さっきまでは…気持ちよかったんだけどね…んぅっ」
「…大丈夫。力抜けって」

俺は杏の痛みを少しでも和らげようとゆっくり挿入する。

「んっあ…モモシロ…く…っ」
「杏…」

俺は杏にキスをした。
舌を絡め、どちらのものとも言えない唾液がお互いの口から伝う。
それで力が抜けたのか俺のモノが杏の中に全て入った。

「やっと…ひとつになれたね」
「あぁ」

杏の頬に涙が流れた。

「好きだよ、モモシロくん。私、モモシロが好き」

杏は俺を抱きしめた。
杏の体が薄くなり、きらきらと光輝いた。

「人間に…なれるのか?」
「うん…。ありがとう、モモシロくん」

杏は現れてすぐの時のように笑った。

「また、会えるのか?!またお前に…」
「すぐ会えるよ…もうすぐ」

杏は消えた。
俺の頬にも涙が流れた。
会ってからそう経ってないのに、俺にとってかけがいのない人になっていた。
これが妖怪の力なのか。

それとも…。

「武ー?」

母さんの声に俺は現実に引き戻された。
慌てて服を着る。

「早えよ、帰ってくんの!」

叫びながらズボンをはき、Tシャツを着る。

「早く下りてきなさいっ」
「へーへー」

俺は階段を下り、母さんの声がした玄関へ向かった。

「またあんた、似たような服着て」

困ったような母さんの声は耳に入らなかった。
俺の目に飛び込んできたのは、

「武には黙ってきたけど」

茶色の前髪をピンで分けた、

「貴方の許嫁の橘杏ちゃんよ」

セーラー服の女の子。

「こんにちは。モモシロくん」

あの笑顔で杏が笑う。
俺は、杏を抱きしめた。
杏の手も俺の背中にまわされる。

「ね。すぐ会えたでしょ?」
「…あぁ。会えてよかったよ」

これからずっと一緒に居られる。
俺に幸せをもたらした、セーラー服の座敷わらし。

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