home > text > > お酒とふたり 後編【堂上 篤×笠原 郁】

お酒とふたり 後編【堂上 篤×笠原 郁】

堂上が郁を背負いながら向かった先は、駅から少し奥まったところにあった。
遠くからでも目立つ看板だけを頼りに来たのだが、目の前にしてみれば真新しく若向きな建物で、昔ながらのそういった建物独特の陰鬱な雰囲気は全くない。
タッチパネルのみの簡単なシステムなのは、気恥ずかしさが薄れてありがたい。
唯一開いていた一室を選んで、すぐ脇のエレベーターに乗り込んだ。
「もう少しだ。辛抱しろ」
「は……はい……」
下心があったとはいえ、基地に戻らず近場に外泊にして正解だった。
宴会で、玄田隊長らに乗せられたとはいえ、郁は酒を5杯飲んだ。
ワイン2杯でぶっ倒れた彼女だ。どう考えても限界を超えている。
小休止で公園に寄ったときは、まだ元気そうに見えたものの、時間が経過するに連れ、アルコールの威力がじわじわと目に見えて来るほどになったらしい。
建物に入ったとき、外目を気にして郁を一応降ろしたが、足下がおぼつかず、支えるように腰に伸ばした腕は部屋に入るまで外せそうにない。
エレベーターが止まり、郁に添えた腕に力を込める。
「……行くぞ」
部屋番号は602。
ドアノブを捻って、郁を中に入れる。そして。
「よくがんばった」
「えっ、あ……っ」
閉めるやいなや、彼女の靴を器用に脱がし、背中を支えながら抱え上げる。
バランスを崩した郁の上半身を自分の胸に引き寄せ、堂上は自らの靴も脱ぎ、部屋へと上がった。
「きょ、教官! あたし、歩けます! 歩けますってばっ!」
「大人しく抱かれていろ。ベッドまで運ぶ」
ふらふらのヨロヨロで何が歩けます、だ。
妙齢の女性を酔わせたまま抱えて入って、変な疑いをかけられる可能性がなければ、先からそうしていた。
堂上は、ダブルベッドの上に郁を横たわらせる。
「水、もっと欲しいだろう。待ってろ、冷蔵庫の冷えたやつを……」
「堂上教官!」
「うおっ!?」
覗き込んだ堂上に、郁が抱きついた。
驚いてそのままバランスを崩す。
「あたし、こうしていればまんろくですから」
顔は見えないが、恐らく満面の笑みであろうことは簡単に予想がついた。
「……お前、さっきよりも呂律が回ってないぞ」
「らいりょーぶですよー!」
「アホ。どこが大丈夫だ」
ぽんぽん、と郁と頭を軽くたたく。
落ち着ける場所に来たという安心感が、彼女の中のアルコール成分の背中を押したようだ。
こうなってしまっては手に負えない。
…………郁が可愛くなりすぎて。
「ん……っ!?」
抑えきれずに、堂上は郁に口づけた。
彼女の息さえ全て欲するかのように、舌を吸い上げ、そして絡めとる。
「んんっ、うっ……んん……っ」
郁の手が堂上の肩へと滑る。堂上は、彼女の柔らかい髪を優しく撫でた。
「……気分の悪さはどうだ」
唇を離して囁く。
「今ので、全部吹っ飛びました」
肩で息をしながら、郁が返す。
「そうか」
堂上の口元が笑って、郁の服のボタンに手をかけた。
仕事が終わってすぐの飲み会だったため、服装はキャミソールにワイシャツ、そしてデニムパンツというラフな格好だ。
ぷつ、ぷつ、と外すと共に、郁の赤い顔が更に赤くなっていくのが見て取れた。
「どっ、堂上教官! あ、あたし、お風呂に……」
「アホか、貴様は。それが酒に弱い人間の言葉か。今風呂に入ったら、温まって余計にひどいことになるぞ」
それに、と堂上は続ける。
「俺をこんなにしておいて、我慢しろとでもいうのか?」
堂上はそう言って、黒いTシャツを脱いだ。
鍛え上げられた体が露になる。
どこを見ていいのかわからなくなったのか、郁は目をそらした。
「そっぽを向くな。お前の顔が見たい」
「よ、酔ってます? 教官」
怪訝そうなその顔に、程々にな、と返して、頬に唇に首筋にキスをする。
そのひとつひとつに反応する郁が愛おしい。
「ひゃっ!」
堂上の手がキャミソールの上から郁の胸に触れる。
柔らかい感触に、堂上が意地悪そうに笑みを浮かべた。
「スポーツブラ、か?」
「こっ、こんなことになるなんて予想してなかったから!」
真っ赤になって抗議する郁がこの上なく可愛い。
「前にも言っただろう。お前にそういう価値観は期待していない」
「期待して欲しいんです! 一応女ですから!」
むくれる郁に、詫びのつもりで口づけた。
「……堂上教官、ずるいです」
郁は小さい声で抗議する。
「お前のコロコロ変わる表情のほうがずるい。可愛すぎて歯止めが利きそうにない」
「なっ!? あっ……!」
堂上の指が郁のぷっくりとした乳首を衣服の上から撫でた。
びりっとする刺激に郁が顔を強ばらせた。
彼女の様子を見ながら、そっと堂上がキャミソールとスポーツブラを上に押し上げる。
そして一気に脱がせた。
初めてのときは、まるで郁を子どものように脱がせていたのに、先ほどの言葉通り、堂上にはあまり余裕がないらしい。
小振りだが形のいい胸が揺れる。
「うっ……」
反射的に郁が胸を両手で自分を抱えるように隠した。
「隠すな、郁」
「で、電気消してくれたら……」
「却下だ。言ったはずだ。お前が見たい」
凛とした声で拒否され、更に腕も外された。
コンプレックスの塊である胸が、外気に触れている。
どうしたら良いか躊躇していると、堂上が郁の胸に顔を埋めた。
「きょ、教官!? んっ……!」
彼を呼ぶ声は、すぐに喘声に変わった。
左の突起を緩く愛撫され、右は堂上の舌が弄んでいる。
その光景は経験の少ない郁にとって、とても刺激的に見えた。
「やっ、やだ……教官……っ、そんな……あっ!」
少し強く吸われて声が跳ねる。
恥ずかしくて思わず手で口を塞いだ。
いやらしい声が自分の口から発せられることにどうしても慣れない。
それに、堂上におかしく受け取られてしまうのではないかという不安も頭によぎる。
「んんっ、ふっ……んんっ、ん……っ!」
気持ちよさと恥ずかしさが一気に脳内に届いて、自分ではない何かに乗っ取られてしまいそうな思いさえする。
こんな自分を、堂上は受け入れてくれるだろうか。
そんな考えすらも快感に沈む。
「あっ、どう、じょ、きょ、かん……っ、あっ……」
押し殺すような喘ぎ。
そんないじらしさが堂上の気持ちを高ぶらせることを郁は知らない。
漏れ聞こえる自分の名前が、郁の艶めかし声に乗り、一層の興奮を呼び起こす。
「郁……」
手を伸ばし、彼女の頭を抱えて押し付けるようにまた口づけた。
瑞々しい彼女の唇が音を立てる。
離せば彼女から熱い息が漏れた。
「きょう、かん……あたし……」
潤んだ瞳。振り切れそうになる感情を抑えて、堂上は問うた。
「やめるか?」
郁はふるふると首を横に振った。
「ちがい、ます。気持ちよすぎて……おかしくて……」
ぎゅっと、郁は堂上にしがみつくように抱きついた。
汗ばんだ肌と肌が密着する。
堂上は、安堵したように笑って郁の髪を撫で郁のデニムのボタンを外した。
目で見てわかるほど、郁の体がビクリと跳ねた。
ゆっくりとデニムを下ろし、郁はショーツだけを身につけた状態になった。
恥ずかしさにもじもじと内股をすりあわせる。
「お前に痛みを与えたくない。すまんな」
それがなんのことなのか、郁にはもう理解できる。
堂上は郁のショーツに触れた。
円を描くように人差し指を動かすと、郁がぎゅっと目を瞑る。
また喘ぎ声を出すまいと、歯を食いしばっているらしい。
堂上は、ショーツの上から郁の小さな膨らみを弄び始めた。
「ふっ、うううんんっ、くっ、うっ……」
ゆるゆると動かし、時にはきゅっと摘む。
声に頑な郁も、表情は快感に身を委ねているように見えた。
じんわりとショーツが濡れ始め、堂上はそれを脱がせた。
ぐちゅ。
直接触れたその場所には蜜が溢れていた。
躊躇うように淵をなぞった後、人差し指を郁の奥へと入れる。
「あっ……!」
そして、ゆっくり出し入れをした。
「あっ、あっ、んっ、んんぅ、んっ……!」
動きに呼応して、郁が鳴く。
卑猥な音が漏れるその場所は、既に頃合いを告げている。
「郁……」
熱っぽく囁き、堂上は郁に今日何度目かも知れないキスをした。
郁の小さい頷きを見て、手早くジーンズを脱ぎ、枕元の避妊具に手を伸ばした。
目をそらす郁の頭をぽんっと軽く叩いた。
「……いいか?」
「心の準備が……出来ていません」
堂上の問いかけに、郁は答えた。
「どうすればできる」
次の問いには両手で顔を覆って。
「…………もう一回、キスしてくれたら」
堂上は一度目を見開いて、笑った。
顔を郁に近づけて、口を開く。
「その手があるとできないんだが?」
「……っ!」
手が緩んだ途端、息つく間も無く口づける。
2、3度舌を絡め、その後チュッチュッと軽くキスをした。
「ふっ、んんんぅ……!」
堂上が、郁の秘部に自分のソレを宛てがい、ゆっくりと押し入れる。
苦しそうな彼女の顔に、一瞬揺らぎそうになる。
けれど、熱いこの感情はもう、簡単に冷やせそうにない。
「郁……っ」
彼女の手を握り、名前を呼んだ。
すがるように郁は堂上を抱きしめる。
「……っ、少し動く」
声がうまく制御できないようで、郁はコクコクと何度も頷いた。
腰を動かし、恐る恐る出し入れする。
そして、少しずつその動作を早めた。
「はっ、あっ、あっ、ん、んっ、んん、うっ」
郁の声が響く。一生懸命に堪えようとするのがわかる。
無我夢中で口づけた。彼女の声が自分の中に吸い込まれるのがわかった。
意識させまいと、何度も何度もキスをする。
すぐそこにある彼女のまつげが揺れるのをぼんやりと眺める。
握った手を強く握り返される。
自分の心臓の音か、彼女のものかわからなくなる。
「くっ!」
「ああっ……!」
彼女の中で自分が震え、堂上は欲望を吐き出した。

行為の後、堂上はそのまま寝入ってしまった郁の体をタオルで拭き、備え付けのバスローブを着せてベッドに寝かせた。
安心しきった寝顔。
親指で頬を撫でると、少し眉を寄せたがすぐに寝息を聞かせ始めた。
そっと、彼女の髪をくしゃくしゃっと撫で、再び整え、ポンポンと軽く叩く。
「……俺も悪酔いが過ぎたな」
酒を理由に口づけ、ホテルへ誘い。
彼女を思えば、そのまま基地へ送り届けた方が良かったのかも知れない。
けれど。
「……お前を抱きしめたくてたまらなかった」
聞けばきっとまた、顔を真っ赤にさせて戸惑うだろう。
堂上は優しい笑みを浮かべて立ち上がると、汗を流すためバスルームへと足を運んだ。

next
back

return to page top