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溜まった欲望【堂上 篤×笠原 郁】

「おかえりなさい! 篤さ……っ」
ただいま、の声に玄関へ飛び出した郁が言い終わる前に、堂上は彼女を抱きしめた。
突然の抱擁に目を白黒させる郁をよそに、数日分の飢えを満たすがごとく、腕に力を込める。
廊下が玄関から一段上がっているせいで、いつもの肩ではなく胸に顔を埋めることになったが、それはそれで役得だ。
「……出張お疲れさまでした」
「ああ」
ふわりと頭に置かれた暖かい手。
いつもそうするのは堂上だが、受け手になってみるとどうにも弱い。
愛しくてたまらなくなる。
「……もう飯食ったか?」
「食べてくるって言うから……。もしかしてやっぱり必要だった?」
自分を心配する声音。
「風呂には?」
「出来てるけど、一番風呂に篤さん……」
ああ、もう限界だ。
「きゃっ!?」
「お前も一緒だ」
堂上は郁の膝裏に腕を入れ、抱き上げた。
スリッパが片方落ちたが気にしない。
足をぐじゃぐじゃと動かして靴を脱ぐ。
たしなめられるが、それも気にしない。
「ひゃっ……」
上気した彼女の頬に口づける。
更に熱を帯びて、こちらを見返すその表情が可愛い。
郁の抵抗を物ともせず、堂上はいわゆるお姫様抱っこをしながらバスルームに向かう。
「ちょ、ちょっと! 強引ー!」
「強引で結構」
脱衣場で郁を下ろし、着ていたカーディガンを脱がした。
そして白いワイシャツのボタンをひとつひとつ外していく。
「うー! お風呂に入った後可愛いのつけようと思ってたのにー!」
ワイシャツの下から覗いた下着は、郁が言うほど悪くない。
白地にさりげないレースがついており、自分の目からは申し分ない。
「どうせ脱がすんだから同じだろ」
なんて、素っ気ない物言いをする。
無粋かもしれないが、本心を言うのには躊躇いがある。
剥れたままの郁を見ながら、堂上は自分のネクタイを緩めた。
そして、そのご機嫌斜めの奥様の唇にちゅっと口づける。
「…………バカっ」
郁は更に頬を赤らめてそっぽを向いた。
「ああ、バカだから可愛くていじらしい奥さんを今すぐ抱きたくて困ってるよ」
「なっ……!?」
とうとう沸騰しそうなほど真っ赤になった両の頬を摘む。
もう一度口づけた。
ああ。たった数日離れただけなのに。
どうしてこんなにも愛おしい。

「ちょ、ちょちょ、ちょっと!」
「ん?」
狭い浴室の中に郁の声がこだました。
一緒にお風呂に入るのも、新婚夫婦の醍醐味と言いはするが、郁にはまだ免疫がそれほどないらしい。
とはいえ、後ろから構い始めたのは堂上なのだが。
「さ、ささ、触るの禁止!」
「どこを?」
郁の控えめだが形の良い双丘を弄びながら、意地悪な笑みを浮かべて堂上が問うた。
「うっ……」
「どこを触って欲しくないって? 堂上郁さん?」
「そっ、そうやって呼ぶのも禁止ー!」
ゆるゆるとふくらみを揉むたびに、湯船に大きな波紋ができる。
目の前にある郁の白いうなじに唇を沿わせた。
「んっ……」
意外な攻めに気が緩んだのか、郁の口から甘い声が出る。
「郁……」
囁くように言うと、郁の肩がビクビクッと震え、湯の中で足をモジモジさせた。
「だ、だめぇ、篤さん……」
「何がだめなんだ?」
「お、お風呂でこんな、へんな気持ちになっちゃう……」
「……へんな気持ちっていうのは」
膝を抱えていた郁の腕を掴み、強引に自分の元へと寄せる。
そして。
「こういう気持ち?」
「〜〜〜〜っ!!」
想像しなかったであろうモノを握らせると、郁は声にならない声を上げた。
その様があまりにも可愛くて思わず笑ってしまう。
「どっ、堂上教官っ、結婚してから、え、えっちになりました!」
思わず少し懐かしくもある仕事口調になったのは、混乱のせいだろう。
「だとしたら、そうさせたのはお前だな。いちいち反応が可愛すぎる。特に今日の俺は飢えているからな。覚悟しろ」
「かっ、かかっ!? って、ん……っ」
郁が振り向いた瞬間に、キスをした。
無防備な唇の隙間に舌を滑り込ませ、彼女のそれと絡める。
郁は、戸惑いながらもぎこちない動きでそれに答えた。
酸素を求める彼女の隙を再び唇で塞ぐ。
少しの時間も離したくない。
やっと近くにいられるのだから。
満足した堂上が顔を離すと、力の抜けた郁がもたれかかってきた。
抱きしめて濡れた髪を撫でる。
「……あたしも」
郁が小さい声で呟いた。
「篤さんがいなくて、寂しかったんですからね」
━━━━ドクンッ。
堂上の心臓が跳ねた。
限界だ、とそう告げるかのように。
「上がるぞ」
「えっ、うわ!」
郁の答えを待たずして、堂上はまた郁を抱え上げた。
その勢いに、一度宙に浮いた湯が大きな音を立てて流れ落ちる。
「あー、もう今日の篤さん、ほんっと強引! ……ちょっと嬉しいけど」
「本音が後からついて出たようだから、このまま作戦を続行する」
そう言って、再び脱衣場で郁を下ろすと、いつも備えてあるバスタオルを手に取って郁にかぶせて、ガシガシと拭き始めた。
「じっ、自分でできますってば!」
「やりたいだけだ。やらせろ」
「じゃあ、あたし篤さん拭く!」
郁もバスタオルを引っぱり出して堂上の体の水分を拭い始める。
こうしていると、郁が新人だった頃を思い出す。
暴風雨の中の野外訓練で、甘い設営のテントが吹っ飛びそうになって、中に入れたずぶ濡れの郁をこうして。
「……何がおかしいんです?」
「ん?」
じっと堂上の顔を見て、郁が口を尖らせてつぶやいた。
あのときのお前に女を感じて胸がときめいた、なんて言ったらどんな反応するだろうか。
「…………いや?」
楽しそうだから、また今度のネタにとっておこう。
その顔は何か企んでるな、と勘のいい郁は訴えたが、答えをうやむやにする。
ある程度拭き終わったところで、堂上は再び抵抗する郁を抱え上げた。

「んっ……」
ベッドに郁を寝かせて、覆い被さるや否や、堂上は彼女にキスをした。
先ほどよりねっとりと舌を絡ませ、熱い吐息を交わす。
離れると、2人の間に細い糸が引いた。
「……出張なんてこれからいくらでもありますよ?」
「ああ」
「あたしだって行くことあるんですよ?」
「……ああ」
上目遣いの郁の額に、瞼に、頬に、首筋に、小さく口づける。
毎回こうですか、と聞くのだろう。そう思い答えを準備すると。
「……あたしのときもこうしても……いいですか?」
予想外の言葉に、堂上は目を見開いた。
自分の顔に熱が集まるのがわかる。
湿った彼女の前髪を親指で触れて。
「……許す」
正面から見れずに、やっとそう言うと、よかった、と堂上の首に手を回して郁が抱きついた。
どうして、こいつは絶妙なタイミングと言葉で自分の心を掻き乱すのだろう。
結婚してもそれだけは変わらない。
ぽんぽんっ、と後頭部を手のひらで軽く叩くと、郁の腕が緩んだ。
そしてまたキスの雨を再開させる。
わざと音をたてて、彼女の羞恥心を誘う。
普段は見れない反応を楽しむのが好きだ。
「あっ……!」
緩やかなふくらむに沿う花を口に含んだ。
吸い上げれば、喘ぎ声が郁の口から漏れた。
片方は指で摘み、そっとはじくように弄ぶ。
「んっ……ふっ……!」
声を押し殺すように郁は鳴いた。
結婚までしたというのに、その恥じらいが愛おしい。
舌を這わせば、手で顔を押し隠すようにしながら喘いだ。
「顔を隠すな」
「やだっ、恥ずかしい」
「可愛いんだから見せろ」
腕をどかして、顔を接近させる。
郁は茹で蛸のようになってそっぽを向いた。
その頬に口づけて。
「んあっ!」
郁の敏感な場所に手を伸ばす。
キュッと、莟を摘むと体全体がビクリと震えた。
「郁」
名前を呼んで、空いた側の手を郁のそれに絡めた。
体を密着させれば、汗ばんだ肌と肌が吸い付くように張り付いて心地よい。
彼女の秘部の形を確認するように人差し指を這わせ、蜜の溢れる奥へと差し入れた。
「ふ……っ、んんっ」
くぐもった声が聞こえる。
ゆっくり抜き差しすると、すぐにグジュグジュと卑猥な音を立て始めた。
「あっ、んん、やっ……!」
「……嫌? 本当にか?」
いじめるようにそう言えば、荒い呼吸をする口が“いじわる”と形作った。
それを待っていたかのように、堂上は笑うと体を起こし、膝で少し後ろに下がった。
そっと手を離して、郁がその意図に気づく前に。
「んあああっ!」
一際大きな声が漏れた。
堂上の舌が、郁の莟を強く吸ったのだ。
「だめっ、あつ、しさ、だめだめ、だめえぇっ!」
快感に耐えようと、郁はシーツを握りしめて叫んだ。
舌で愛おしそうに舐め回し、指は本数を増やして中を愛撫する。
閉じようとする足を無理矢理開いて、郁を攻め立てた。
「んんぅ、ふあっ……あっ……!」
頭上から聞こえる溶けるような艶声にゾクゾクする。
郁の体がビクビクと震えたところで、やっと堂上は顔を離した。
「はあ……はあ……っ」
とろんとした顔をする郁の頬に、自分の頬をこすりつけた。
「篤さん、ほんと、えっち」
息絶え絶えに言う郁に苦笑する。
男女の関係に疎い郁には、こんな行為があることすら知らなかったようだ。
「えっちでいいよ。郁を独り占めできるならな」
そう言って、堂上は枕元にある小物入れの中を探り、コンドームを取り出した。
そしてあっという間につけ終わり、郁に向き直った。
「……いいか?」
こくりと頷いたのを待って、ゆくりと郁の秘めた場所に自身を押し入れた。
指で感じたより熱くて、押し返されそうなほど狭い。
歯を食いしばる郁をなだめるように、静かにキスをした。
「……はっ、……動くぞ」
郁の両手に自分のそれを重ねて、堂上は腰を動かした。
すぐに、郁の声が小刻みに聞こえ出した。
「……すまん。あまり優しくしてやれそうにない」
一言添えて、自分の欲望を全て出し尽くすかのように打ち付けた。
「あっ、ん、ん、んんっ、うっ、あっ」
艶めかしい声に更に欲情する。
乱れた姿を更に自分の色に染めてしまいたくなる。
「郁っ、郁……」
彼女を起こし体勢を変える。
座った姿勢で郁を下から突き上げると、ぎゅっと郁が抱きついた。
小さな乳房の突起が、自分の肌を擦る。
「あつ……しっ、さっ」
「ん?」
郁の手が、堂上の両頬に触れる。
「気持ち、良い?」
その問いは、少し意表をついた。
今までされるがままで精一杯だった郁が、堂上を気にかけたことに。
「ああ、気持ちいいよ」
語尾はほとんど掠れて息になった。
その瞬間。
「…………っ!」
郁が堂上に口づけた。
重ねるだけ、けれど長いキス。
息が苦しくなった頃、ゆっくりと顔を離して。
「あつし、さ……っ、好き……っ!」
へにゃっとした表情で掛けられたその言葉に、堂上の心は大きく動いた。
「アホウ、っ。今そんな顔、すんな……っ!」
真っ赤になって苦しげに顔を歪めて。
「あっ、ああっ……!」
「くっ……!」
強く彼女を抱きしめると、堂上は全てを吐き出した。

腕の中で眠る郁の髪を撫でる。
幸せだ。心底そう思える。
「……あれは反則だろ」
郁のキスとその後に発せられた言葉。
「俺も……愛している。郁」
小さな寝息を立てる彼女を眺め、額にそっと唇を押し付けた。

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