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legame -絆-【ライン×カルナ】

 この世界の全てが変わる戦いを終えてから、もうどれくらいの時が過ぎただろう。カルナの住むコロニー6は、多くの人々の命が奪われ、破壊し尽くされたことが嘘のように活気を取り戻している。目まぐるしい復興を遂げ、ホムスやノポン族はもちろん、ハイエンターや機界人といったあらゆる種族がともに生活する街として、コロニー9をはじめとする多くの都市の発展に影響を与えていた。
 ……いや、もう『コロニー』という名称すら、意識的には薄れつつある。それでも、自分の生まれ育った、愛する人と暮らしたこの街から離れる気にはなれなかった。
 あの頃とは違うけれどでも、あの頃のにおいが色濃く残るこの街で生きて行きたかった。故郷という愛着と愛する人の面影をまだ追っている自分がいる。
 未来を、世界を変えた。だが、長い年月を経て重ね続けてきた想い出を忘れることはできなかった。そうしてカルナは、この街でジュジュと共に生きていくことを選んだのだった。とは言え、都市と都市の交流はかつての巨神界での頃とは比べ物にならないほど活性化した。機界人たちの技術を取り入れたことで、街道の整備が格段に進んだのだ。彼女も彼女の友人たちもお互いの住処への行き来は頻繁に行っている。
 今日も弟のジュジュは、シュルクたちの住む街へ遊びに出かけていた。

「んーっ、そろそろ帰ってくる頃かしらね」

 カルナは大きく伸びをして料理台の上に立った。麻ひもで髪を後ろに束ね、台所の脇に置いている食材袋に手を伸ばす。

(今日はまた釣りでもしてるのかしら。リキもたぶん来てるだろうから……またラインが二人のお世話で大変そうね)

 ふふっ、と口を緩ませてはたと気がつく。……また、ジュジュではなくラインのことを考えていた。いけない、と頭を左右に振った。彼のことはもう、親しい仲間の一人だと思い込もうとしていたのに。
 婚約者であるガドを愛している。機神兵に襲われたコロニー6を脱出して、巨神脚に身をひそめていたときもシュルクとラインと共に旅立ち戦いに身を投じてからも、彼は生きていると信じていた。それなのにラインと横にいるうちに、ラインの人柄に触れるうちに惹かれている自分がいた。はじめはガドの面影を重ねて、いつしかラインだけを見て。

「でも私は……」

 機神界で再びガドにまみえた時、自分は深く深くガドを想っていたのだと強く感じた。ガドのことは忘れられない、忘れることなどできない。愛しているのだ、彼を。

「……ほんと、ダメね」

 胸の前で握ったこぶしにもう一度力を込める。彼が逝っても未だ愛しているのなら、ラインに好意を寄せることなんて許されない。だから、彼は仲間で、大切な友人で、笑顔で親交を深められるならそれでいい。
 それで十分だ。
 ドンドンッ、という音に驚いて、カルナは意識を現実へと戻した。誰かがドアを叩いているようだ。

「はーい!」

 ジュジュかしら。そう、窓の外に見える夕暮れに見当をつける。でも、それならノックもなしに入ってくるはず。少し怪訝になりながら、ドアを開ける。すると大きな青年がカルナに影を落とした。

「よお、カルナ」
「ッ! ライン……?」

 心臓が強く胸を打った。そこにいたのは、今しがた想いを馳せていた人物、ラインその人だ。気まずいとまではいかずとも、あまりのタイミングに少し動揺する。

「ジュジュは一緒じゃないの?」

てっきり送ってくれたのかと思った、とカルナは続けた。

「ああ、実はリキやシュルクたちと盛り上がっててな。一泊していきたいんだと。俺、たまたま明日防衛隊の任務でこっちに用事があったんで、ちと早めだけど伝言がてらやってきたってわけ」
「そうなの。わざわざありがと。もう、まったくジュジュったら始めからそのつもりで行けば良いのに。ライン、何か食べてく? 今からちょうど夕食作ろうとしてて。タテドナスさんから教わったレシピ、試そうと思ってたの」
「そりゃいいや! 楽しみに待たせてもらうぜ」
「ふふっ、良かった。じゃあ、ちょっとだけ待っててね」

 ラインの爽快な笑顔に心が温かくなって、カルナにもまた笑みが浮かんだ。勇ましくて頼りがいのある器量はガドによく似ているのに、屈託なく笑うその姿は彼とは違う。年上である自分でも目を見張る程、冷静で誰よりも真に迫った思考を備えているのに、どこか少年のようなあどけなさもラインは持ち合わせているように思う。
 ラインがいつもここへやってくるときに座るテーブルの椅子で待つように促して、カルナはその向かいにある料理台へときびすを返した。

「……いいじゃん、それ」
「ええ?」

 不意に声を投げかけられ、カルナはナイフで食材の皮をむきながら顔だけ傾けてラインに聞き返す。

「なんかいつもと雰囲気違うなと思ってよ。その髪型」
「ああ。やっぱり料理のときはこうしたほうが楽なのよ」
「へえ。なんっかいいよなあ、そういうの。なんつーか、母ちゃんみたいで」
「お母さんみたいって……」
「まあ、俺自身はあんまり母ちゃんが料理してるとこ、覚えてねえんだけどな。そう考えるとジュジュは羨ましいよな、ご飯作ってくれる姉ちゃんがいて。ま、俺にはシュルクたちが居たからあんまし寂しいとは思ったことねえけど」

 そう言うとラインは勢いを付けて椅子から立ち上がり、窓の外に広がる街を見渡した。

「……いつだって食べにきてくれてもいいのよ? フィオルンよりはちょっと味が劣るかも知れないけどね」

 彼を見て止めてしまっていた手を再開させる。そうだ、彼らは肉親を早くに亡くしている。先ほどの物言いは少し配慮がなかったかもしれないとカルナは思った。

「慰めてくれてんのかよ。もうそういう生活に慣れちまってるからな、気にすることねえぜ。純粋に家族っていいよなって思っただけなんだからよ」

 また幼いようにも思える笑顔で、こちらの想いを掴んだ言葉をかける。猪突猛進のようでいて、誰よりも周りのことを気にかけるラインらしい台詞だった。

「うん……ありがとう」
「礼をいう場面じゃねーよ」

 そうやり取りして二人は笑い合った。

「あー、うまかったーー! ごちそうさまっ!」

 テーブルの上の料理を全て平らげて、ラインは膨らんだ腹を撫でた。

「口に合ったみたいで良かったわ」
「謙遜すんなよ。腹一杯ふくれるし、めちゃくちゃうめえしで俺はカルナの作る料理、好きだぜ」
「ふふっ、ありがとう」

 ジュジュもそうだが、ラインは殊の外嬉しそうに食べてくれるので作りがいがある。見返りは求めていなくとも、やはり美味しいの一言があるかないかで喜びは段違いだ。

「そう言えばライン、今日はどこへ泊まるつもり? 防衛本部かしら?」

 カルナの言葉に、ラインはハッとして顔色を変える。

「あっ、そうだ! やべ。オダマさんに連絡し忘れてた!」

 立ち上がって窓の外を見るともう日は落ち、あたりはすっかり暗くなっている。

「この時間に防衛本部に宿泊申請するのはもう難しいわね。どうする? ウチに泊まってく?」
「! いいのか!?」
「もちろん。ラインが良ければ、だけど」
「サンキュー、カルナ! 危うく野宿になるとこだったぜ!」
「ッ!」

 突然抱きしめられて胸が高鳴った。バランスを崩しそうになった皿をなんとか安定させる。ラインのにおいがする。引き締まった硬い胸が頬に触れる。

「! ——っと、わりい! つい、シュルクたちとの癖で」

 またも突然引き離された。見上げたラインの顔は耳まで赤くなっている。

「ぜっ、全然! お役に立てて何よりよ」

 取り繕うように答えたカルナもまた、声音に動揺が隠せなかった。

(よく考えたら、とんでもないこと許可しちゃってない? 私……)

 共に旅をしていたときには気にしてすら居なかったけれど、普通年頃の男女がお互いの家で泊まるということはつまりそういうことで……。いくら親しい仲間だとは言っても行き過ぎだったかも知れない。それでも、野宿させるのは心配だ。

(まあ……ラインだから、大丈夫よね?)

 ラインだから——自分にとっては——大丈夫じゃない、という考えも頭に浮かんだがすぐに打ち消した。
 意識しないと決めた。彼は信頼している仲間だ。だからきっと、誓った想いが揺らぐことなんてない。

 ギシッと少し小さなベッドが軋む。カルナが身を預けているのはジュジュのそれだ。ラインの体格ならジュジュのものより大きめの自分のベッドのほうが良いと考えて明け渡した。それでも彼にとっては窮屈かも知れないが。
 外から微かに虫の声が聞こえてくる。薄暗い天井をぼんやりと眺めた。少し視線を横にすればラインが寝ている。手を伸ばせば届く、自分がいつも使っているベッドで。

(かえって心臓に悪いわね……)

 身を捩って寝返りを打つ。また一つベッドが鳴いた。

「……眠れないのか?」

 背中側から声がして、どきりと心臓が跳ねた。

「ごっ、ごめんなさい! 起こしちゃったかしら」

 慌てて上半身を起こすと、ラインがそれを制するようにヒラヒラと手を振った。

「全然。っつーか、俺も何だか眠れなくてよ」
「やっぱりベッド小さかった?」
「んなことねえって。どちらかっつーと、その……カルナがいつもここで寝てるって考えたら……まあ、そんな感じだ」

 言葉を濁して恥ずかしそうにでかい図体を丸めるラインにカルナはかあっと体中が熱くなるような気がした。

「わ、悪い。気分悪いよな、こんなこと聞くの」
「う、ううん。そんなこと、ないけど。でも、ラインもやっぱり男の子なのね。そんなこと考えるなんて」

 今度はラインのベッドが大きく軋んだ。肘をついて頭を支えながら、彼がこちらに体を向ける。

「一応、これでもいっちょまえの男のつもりなんだけどな、俺」

 ドキン、ドキンと鼓動が強く打ち付ける。窓からの月明かりに照らされた彼の肢体は以前にも増して引き締まったように思える。茶化すような物言いをしたラインだったが、その口元は笑みを携えては居なかった。

「……気づいてるだろ、カルナ。俺がお前をどう想っているか」

 気がつかないわけがない。とっくに知っていた。知っていて気がつかないふりをしていた。

「…………私が応えられないのもわかっているでしょう、ライン」
「ああ、知ってる」

 そう言うと、ラインは体を起こしてカルナに手を伸ばした。

「なっ……」

 大きなその手が頬に触れ、カルナの体がビクリと反応する。

「すげえでかい壁だよ、簡単に乗り越えられそうにねえくらい。……だってよ、あのとき……機神界でのあのとき、痛いくらい伝わってきたんだ。カルナがどれだけアイツを想っているかがさ」
「なっ、ならどうして……」

 カルナの問いにラインの目尻が少し下がる。そして、彼の額がカルナの額へと押し付けられた。

「仕方ねえだろ。俺はそんなお前を好きになっちまったんだ。アイツを一途に想い続けるお前を、信じ続けるお前をさ。だから——」

 心地よい体温が、たった少し触れた場所から伝わってくる。

「俺はアイツごとお前を受け入れる覚悟は出来てる。もちろんお前が嫌なら俺たちの関係はこれまで通りさ、それでも構わねえ」

 ベッドの縁に腰掛け直したラインがカルナの両肩を掴み、視線を合わせた。

「カルナ、俺は……」

 眉を眉間に寄せてまっすぐカルナを見つめて。

「お前が好きだ」

 体の奥から膨れ上がってきた熱は、涙となって瞳から溢れた。歪む視界の中で見えるラインの顔は真剣だった。
 ガドを愛している。もう居ないあの人を愛している。そんな自分でもいいと、彼は言った。……決めたのだ。自分もラインに惹かれていた。けれど心の中に住むガドをずっと愛していくと決めたのだ。なのにどうして、こんなに揺れているのだろう。

「……ライン、あなた優しすぎよ」

 やっと口に出せたのはいつものように、彼をたしなめる言葉だった。うまく心の中が整理できない。けれど、己の意志をはっきりと示してくれた彼に報いたかった。

「私、ガドのことを愛しているわ」
「……ああ」

 ラインの瞳が哀しげに揺れた。

「でもね、ライン。私……貴方のこともきっと好きなの。ずっと見ないようにしてきたの。だって……だってこれじゃ、貴方にもガドにも酷いことしてるみたいで……っ!」
 ラインの大きな体が自分に覆い被さり、柔らかいベッドに頭が沈んだ。自分を見下ろしているラインの顔は穏やかだった。

「……言ったろ。俺はアイツごとお前が欲しいんだ。アイツのことを想い続けていいんだ。忘れてくれだなんて、俺は言わねえ」
「でも、それじゃ貴方……ッ」

 貴方の気持ちはどうなるの、と続けようとしたカルナにラインは大きく首を振った。

「それでいて、俺を好きだって言ってくれるならこんなに嬉しいことはねえよ。……だいぶ変なヤツだな、俺」

 最後は茶化すように笑って、また額と額をくっつけた。

「……馬鹿ね」

 つられて笑うと、目尻に溜まった涙が頬骨を滑って耳の後ろにじんわり広がる。彼の首筋にしがみつくように腕を伸ばした。

「…………ありがとう、ライン」

 あの人を想い続けていい。その言葉がカルナの心に強く響いた。

「カルナ……ッ」
「っ、ちょっ……ライン!?」

 突然体が宙に浮いたかと思うと、次の瞬間にはラインの体の上に倒れ込む。カルナを抱き上げたラインがその勢いのまま、自身の座るベッドに寝転んだようだ。それもつかの間、また視界が反転してあっという間に再び組み敷かれていた。

「……ワリィ。くそ、カッコつけてたのに情けねえよな。意外とこれでもいっぱいいっぱいっつーか」

 そう言ってラインは自分の額に手のひらを押さえつけて苦笑いする。

「なあ、してもいいか? その……っ、キスを」
「キ、キスって……もう、先に断りを入れるなんて貴方らしくないじゃない」
「なっ、なんだよ。それって良いってことか?」
「じっ、自分で考えなさいよ」

 慣れない空気に思わず喧嘩腰になる。まっすぐに彼を見ることができずにカルナは視線を泳がせた。

「……わかったよ」

 ひとつ、ラインが大きく息を吸い込む。心臓の音が体中に振動する。肌が熱を帯びる。

「ヘタクソでも笑うんじゃねえぞ」
「んっ……ッ」

 ギッとベッドが沈み、ラインの唇がカルナのそれに降りた。ただ重ねただけ、それだけのはずなのに胸が壊れんばかりに高鳴る。カルナの前髪をラインの指が弄び、そのまま頬へと手のひらごと滑った。

「ライン……」

 ぶちゅっと、小さな音を立てて離れた唇に今度はカルナから重ね合わせた。彼の頬を両手で包んで、小さくなんども啄んだ。抑えていた想いがキスを交わすたび大きく膨れ上がっていく。隠しきれないほど露になっていく。

「んんっ、はぁ……ん、んんぅっ……」

 気がつけば、またラインがリードしていた。不意に入り込んだ舌が恐る恐る絡められる。応じれば、すぐに彼の躊躇は消えた。
 くちゅくちゅと頭の中に淫らな音が響く。つぅっと口の端から糸が溢れ、カルナの艶ぼくろが扇情的に色めいた。

「ッ、はっ、カル、ナ、俺……、もう我慢できねえ」

 肩で息をしながらラインは言うと、体に良くフィットしている薄い上着を伸びをするようにして脱ぎ捨て、カルナの頬や首、鎖骨に軽く口づける。熱い吐息と肌に浮かんだ滴玉に彼の興奮が見て取れた。

「……来て、ライン」

 胸元に並んだ三つのボタンをぷちぷちと外す。抑えのなくなった胸が左右に大きく揺れる。

「カルナ」

 また、ラインが自分の名を呼んだ。懇願するような瞳にはにかみながら頷いた。

「やわらけえ」
「……そういうこと言わない」

 ラインの大きな手でも余る程のカルナの胸。彼の手の動きに合わせてゆるゆると形を変える。
「んっ……!」
「ここがいいのか?」

 一際敏感な突起をラインは繰り返し触れた。

「あっ、だめっ……そ、んな何度も……んんっ」
「カルナ……すっげえヤラしい……」

 ラインは嬉しそうに言うと、またキスをした。頭の奥から痺れてしまうほど深く口づけられ、気が遠くなるほど甘い愛撫をされる。熱を帯びた肌と肌が触れて、それで改めて彼とそんな行為をしているのだと自覚して。淫らな心地に身を任せきってしまいそうになる。

「っ、はっ、あっん、やっ……あっ……!」

 ビクンッとカルナの身体が跳ねた。それはラインの指がいつのまにかショートパンツ越しにカルナの秘部をなぞったからだった。

「ちょっ、ラインッ、だ、だめよ、そこは……ッ!」
「どうしてだよ? ……へへっ、ぐちゅぐちゅいってら。これ、お前が感じてくれてるってことだろ?」
「そんなの……っ、言えるわけ……ないじゃな……ああっ!」

 にぃっとまた頬を緩めたラインが、今度は指先をカルナのショートパンツ内に差し入れた。一瞬掠った小さな莟が過敏に反応した。一度触れたのにも関わらず、ラインの指は再びその核を探すようにカルナの大切場所を触れ回る。縁をたどるようにゆっくりとした動きに、ビクビクと身体が小刻みに揺れた。

「はぁ……焦ら……さないで、お願い」

 涙まじりにそう言うと、ラインの喉元からゴクリと唾を飲む音が聞こえた。

「あ、ああっ!」
「これ、かよ?」

 弾くように触れるとカルナが仰け反るようにして声を上げ、それを抑えるためか口元を両手で塞ぐ。

「ダメだって。聞かせろよ」

 ラインはそんな両の手首をいとも容易く掴んで片手で彼女の頭上に束ねた。

「やっ、恥ずかし、あっ、んんぅ、やっ、ああっ、ん……ふっ、あっ」

 人差し指を小刻みに左右に揺らせば、情欲的な彼女の口から喘ぎ声が漏れた。

「やっべえ……俺も、もう限界……」

 下腹部に纏っていた衣服から、ラインは高く屹立した己の自身を取り出した。初めて見た好きな女性の裸、初めてした淫らな行為に、脈打つのがわかるほど熱を帯びている。
 これまでの勢いとは裏腹に、カルナのショートパンツをゆっくり優しく脱がせきると、ラインはもう一度カルナを組み敷いた。

「……いいか、カルナ」
「きっ、聞かないでって……言ったでしょ」

 答えは『良い』と言っているようなものだ。ラインはそうかよ、と耐えるような笑みを浮かべた。
 愛液に濡れそぼったその場所は、ラインの自身の先が触れるとくちゅっと微かな音を立てる。幾度かの呼吸音が聞こえた後、じゅぷぷと卑猥に鳴きながら彼がなかへと進み入ってきた。

「んあっ、あっ、やっ、大き、い……!」
「カルナ……っ、痛く、ねぇか?」

 ふるふると頭を振る。安心したような息づかいが聞こえ、今度は一気に押し上がってきた。

「あっ、ああああっ」

 熱くてビクビクと血が震えているのがわかる。それがゆっくりと、そして次第に速く上下し始めた。

「んあっ、あんっ、あ、ああ、あっ!」
「カルナ、カルナ……!」

 何度も何度も打ち付けられる。そのたび、二人の間で弾ける愛液と肌と肌が擦れる音が部屋のなかに響いた。

「キス、してっ、ライ……んっ、んんっ」

 少しでも深く重なりたい。その想いがキスを一層激しくさせた。ラインに合わせてベッドがギシギシと鳴って、カルナの胸も劣情をさらにあおり立てるかのように揺れた。

「はあっ、ん、んんっ、うっ、はぁ、んんんっ」

 ラインより強く抱きしめる。全てを食らい尽くすかのように荒々しいキス。己の全てをぶつけるとでも言うかのように突き上げる様。快感と愛しさとが交錯する。……愛している。私はこの人を愛している。

「カルナ、カルナ、俺、もうっ、キちまう、かも」
「あっ、あたし、もっ、あっ、やっ、あ、ああっ、ライ、んんっ、んあっ、あっ、ああああっ——」
「カルナ、カルナ、カルナ……あっ、うっ、くっ……!」

 彼女の名前を呼んで、ラインは自分の精をカルナのなかに吐き出した。

 外が次第に明るくなり、窓の桟に飛び降りた小鳥がピチピチと可愛らしいさえずりを始める。重い瞼を開けたカルナは二、三度目を瞬かせてぼんやりと眠りにつく前のことを考えていた。ラインに想いを告げられて、あの人ごと受け入れてもらって、そして……。

「っ、いけない!!」
「いっで!」

 カルナが飛び起きると同時に、体を弾みにされたラインが苦痛の声を上げた。ラインは両の目をこぶしで擦って再度眠りにつこうと眠気眼の抗議をする。

「なんだよ、もう少し寝かせてくれたって……」
「ちょっと、ライン! あなた今日、こっちで防衛隊の仕事があるんじゃなかった?」
「! やっべ、そうだった!」

 まるでベッドがトランポリンに見えるほど勢い良く跳ね起きて、ラインはわたわたと装備を身につけ始めた。そんな彼を見ながらため息をつくと、カルナはシーツを体に巻き付けて眠気覚ましに暖かいものを作ろうと料理台へと向かおうとする。

「あっ、待てよ。カルナ」
「なあに? ライ……っ、ん……」

 優しく触れたのはラインの唇だ。

「おはよう、カルナ」

 遅刻しそうだというのに、屈託のない笑顔を向けるラインにカルナもまた思わず口元が緩んだ。

「……おはよう、ライン」

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