「飴、食べます?」
朝、コンビニで買った飴の袋をカバンから取り出して。
貴方の様子を少し窺う。
その袋をじっと見て貴方は、
「ん、いい」
と、スポーツドリンクを飲んだ。
貴方の首を伝う汗が、太陽の光に反射する。
「そう、ですか」
私は袋からひとつ、飴を取り出した。
口のなかに広がるイチゴ味。
コロコロと舌の上を転がる三角の。
「甘いのあんま好きじゃねぇんだよ」
そう言って貴方は、ミント味のタブレットをガリガリ噛んだ。
知らないことがまだまだたくさんある。
まだ私たちは出会ったばかり。
下を向いたら、影が落ちて。
顔を上げる。
「…つぐみ…」
優しく名前を呼ばれた。
唇に柔らかく冷たい感触。
目の前には貴方。
私のなかに侵入した貴方は、ひんやりとして痛いくらい。
イチゴとミントが一緒になって、貴方の舌が飴ごと私のそれを絡める。
唇と唇が離れたとき、飴は私のなかにはなかった。
「…たまにはいいんじゃねえの」
イチゴ味の飴が、貴方のなかで転がった。
心臓の音が、止まらない。