からかいたくなる。
無性に。
怒った顔が見たくなる。
いつも。
目が離せなくなる。
何故か。
俺はまた姉崎まもりを見てる。
ア メフトの試合や本気で何か考えたいとき、部活に専念してるときはさすがに見て はいないが。
ふと顔を上げればあいつを捜してる。
目で追ってる。
からかいたくなる。
「糞ッ」
部活が終わった放課後の部室。
うるせぇ奴らはとうに帰り、今は俺と糞マネ。
パソコンに向かいながら呟い た俺の言葉はしっかりやつに届きやがったようで。
「…どうしたの、ヒ ル魔くん」
あー、それは全部何もかもすべてお前のせいだよ。どうして くれるんだ、この糞マネ!
…と言えるわけもなく。
「言ったとして も糞マネさんには、到底わからない内容なので言っても無駄です」
おー おー、顔が赤くなってきやがった。
ここから先、こいつの言うことは非常に 予想がつきやすい。
なによ、その言い方。
「なによ、その言い方!」
心配してるのにそれはないでしょう。
「 心配してるのにそれはないでしょう?!」
だいたいヒル魔くんはいつも そう。
「だいたいヒル魔くんはいつもそう」
ちゃんと相手のこと考 えて言ってる?
「ちゃんと相手のこと考えて言ってる?!」
あー、 予想すんのも面倒くさいほど一致しやがる。
俺はパソコンを閉じると、それ をテーブルへと置いた。
「…考えてなきゃ言わねえ」
「え…?」
呆けた顔でやつが俺をみる。
良く動く顔だな。
「……百面相」
「ちょっ、ちょっとなによ」
楽しすぎる。
こいつは俺の考えてるこ となんか本気でわかんなくて、俺はこいつの考えてることなんざお見通し。
これから俺がしようとしていることだって、こいつはきっとわからない。
「この糞激ニブ女…」
「なっ…!」
続く言葉を聞かず、俺はやつの 顎を持ち上げ、口付けた。
反射的に強く目を閉じるこいつ の顔を見る。
俺が舌を動かすたびに、頬が高揚する。
吐息が熱っぽくな る。
……可愛い。
んなこと、口が裂けても言ってやらねぇけど。
や つの俺のワイシャツを握る手が強くなる。
俺の舌が更にやつの口内を犯す。
もっともっと欲しい。
こいつが。
こいつの全てが。
「…ふぁ… 」
唇を離すと、こいつはくたっと力なく俺にもたれ掛かった。
「…なんでいつも…こんなことするの…?」
「さーぁ」
俺はまたそ う言ってからかう。
「……バカ」
バカだよ。
本当にバカだ 。
だが、こんなになっちまったのはきっと。
「お前のせいだろ?」
『姉崎まもり』という、強烈な惚れ薬。