「ねぇ、先輩。キスってどんな味がするの?」
「あん?」
いつものように越前をチャリの後ろに乗っけて暗い道を進んでいたら、突然そいつがそんなことを言い出した。
「どんなって…人によるだろうがよ」
俺は少し考えてそう言った。
「お前、アメリカ帰りだろうが」
「mouth to mouthはしてないッスよ。親父がそういうのはとっとけって言ったから」
俺はふーんと言ってそのままチャリをこいだ。
「…で、キスってどんな味がするの?桃先輩は」
「したことないからわかんねえよ」
「じゃ、して。今」
俺はチャリを止め、越前を見つめた。
「いいのか?」
「いい。桃先輩なら」
越前はチャリから下り、俺の前に立った。
「俺も越前なら良い」
「好きとか言ってくんないんスか?」
「伝わってんじゃん」
そして俺は越前の唇にそれを重ねた。
越前の唇は柔らかくて、少しさっき飲んだファンタの味がした。
俺は唇を離し、耐えきれず越前を抱きしめた。
「先輩、痛いッス…」
「どんな味した?」
俺の質問に越前は少し赤くなって答えた。
「…桃先輩の味ッスよ」