「直斗……」
考えれば考えるほど頭のなかがぐしゃぐしゃになっていく。
どうして自分はこんなに。
「クソッ」
自分を見てくれた。
周りの声に流されず、例え謎を追うという理由があったとしても。
「……巽……くん?」
怪訝な顔をして、直斗が自分を見上げる。
勢いで掴んでしまった腕をそっと離した。
「……悪ぃ」
聞ける訳がない。この気持ちの答えはなんなのか、なんて。
「いえ……」
伏せた直斗の表情に、胸がいたんだ。
……ひどく苦しい。
「……僕はおかしいでしょうか」
「あ?」
彼女の声に、完二は顔を上げる。
「女のくせに男であるとに憧れて。女であることに苛立ちを覚えることだってあった」
直斗は表情を隠すように、帽子を目深にかぶりなおした。
「どうしようもない、心のどこかでそう思っていました。……それでも」
「男であろうとした。誰よりも強く、冷静な男に。……なのに」
凛とした声が微かに震える。
「君の前なら……そうでなくてもいいと思えるんです」
ドクンッと、完二の心臓が一際大きく脈をうった。
そうか。これが━━。
「……答えって、わけかよ」
「えっ……」
直斗が聞き返す前に、完二の体は動き出していた。
小さな身を抱きすくめると、隠れ蓑になっていた帽子がふわりと舞った。
「……やっとピンと来たぜ、直斗」
「な……何がですか?」
耳に届く声音は女子のそれだ。完二はすうっと息を吸い込む。
「俺ァ、お前が好きってことをだよ」
柔らかな風がふたりを包み込むかのようにふいた。
淡い桜の花びらが舞い上がる。
━━どうか、君の答えが。ぼくのそれと同じでありますように。