ペルソナ4:巽 完二×白鐘直斗

廻り道した初恋

「……だから、薬師寺さん! 僕にはこんなの必要ない……っ」「直斗……か?」無理矢理振り袖を着せられて、強引に連れてこられた料亭の一室。呼ばれた自分の名に目を見開く。「たつみ……くん?」懐かしい、けれど見慣れない雰囲気に身が引いた。ずっとずっ…

うたたね

「……巽くん?」どこか居心地が悪い教室を抜け出して屋上へやってくると思わぬ先客がいた。フェンスに持たれるように座ってるのは間違いなく巽完二だ。いつもであれば、昼休みに人気のこの場所も、今日は生憎の曇り空で他に誰もいない。(せっかくだから話で…

不可解な感情

「ぶぇっくしゅっ」廊下の真ん中で大きなくしゃみ。少し驚いて見ると、鼻をすすっていたのは、巽完二だった。(……自業自得というか)思わず呆れてため息が出る。今日の天気は雨だ。登校中の出来事が思い出される。直斗が差し出した傘を断って走っていった完…

はじめての

「……まっ、待てタンマだ、タンマ!!」完二はそう言って、直斗から顔を反らせた。顔は真っ赤に染め上がって、まるで茹で蛸のようだ。「ま、またですか!? ……もう」彼を責める直斗も寸分の違いのない表情をしている。何度目だろう、こんな会話を交わすの…

君に嫉妬

君といると嫉妬する。その大きな手に。見上げてしまうほどの高い背に。僕を簡単に抱き締めてしまう体に。たまらなく欲しかったものを兼ね備えている君が、羨ましくてしかたないんだ。「あ? どうした?」僕の視線に気づいた巽くんが、不思議そうに見つめてく…

答え

「直斗……」考えれば考えるほど頭のなかがぐしゃぐしゃになっていく。どうして自分はこんなに。「クソッ」自分を見てくれた。周りの声に流されず、例え謎を追うという理由があったとしても。「……巽……くん?」怪訝な顔をして、直斗が自分を見上げる。勢い…

君が見せたヒカリ

「先輩、ちょっと待ってくれねーッスか」完二の言葉に、秘密結社改造ラボを進む自称特別捜査隊の面々が立ち止まった。「どうした、完二」「…………」鳴上の問いに答えず、完二はくるりと直斗へ向き直る。そしてツカツカと近づいて、彼女の腕を掴んだ。「えっ…

曇り空の日の出来事

行きつけの手芸店を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。ここへ来たのは学校が終わってすぐだったはずなのに、あれもこれもと見ているうち、時間の概念がなくなってしまったようだ。携帯を取り出して時間を確認する。まず目に入ったのはデカデカと表示され…

言ノ葉

※ペルソナ×探偵NAOTOのネタバレあり。「つ、らかった、ら、いつ、でも、いえ、よ。お前、は、おれ、の……」携帯のディスプレイとボタンを目で何度往復させただろう。使いこなせていないわけでは決してないが、このまどろっこしさはいつまでも慣れない…

巽 完二再失踪

「あっ……」「んあ?」PM07:45 沖奈駅前────巽完二は、白鐘直斗を見て、目を丸くした。そして。「っ……」「たつ……あっ」今来た道を逆方向へと走りだした。「誰だよ、ナオちゃん。もしかして、知ってるやつ?」「う、ううん……! 知らない人…

罪、惑い

「……っんの、バカッ!! 直斗、危ねぇっ!!」「!!」……格好つけて庇ったものの、テメェがそのままぶっ倒れてちゃ意味ねえだろうが。「……巽くんっ!」「……っ……?」目を開くと、見慣れた天井があった。……あ? さっきまでテレビん中にいたんじゃ…