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不可解な感情

「ぶぇっくしゅっ」廊下の真ん中で大きなくしゃみ。少し驚いて見ると、鼻をすすっていたのは、巽完二だった。(……自業自得というか)思わず呆れてため息が出る。今日の天気は雨だ。登校中の出来事が思い出される。直斗が差し出した傘を断って走っていった完…

はじめての

「……まっ、待てタンマだ、タンマ!!」完二はそう言って、直斗から顔を反らせた。顔は真っ赤に染め上がって、まるで茹で蛸のようだ。「ま、またですか!? ……もう」彼を責める直斗も寸分の違いのない表情をしている。何度目だろう、こんな会話を交わすの…

君に嫉妬

君といると嫉妬する。その大きな手に。見上げてしまうほどの高い背に。僕を簡単に抱き締めてしまう体に。たまらなく欲しかったものを兼ね備えている君が、羨ましくてしかたないんだ。「あ? どうした?」僕の視線に気づいた巽くんが、不思議そうに見つめてく…

答え

「直斗……」考えれば考えるほど頭のなかがぐしゃぐしゃになっていく。どうして自分はこんなに。「クソッ」自分を見てくれた。周りの声に流されず、例え謎を追うという理由があったとしても。「……巽……くん?」怪訝な顔をして、直斗が自分を見上げる。勢い…

君が見せたヒカリ

「先輩、ちょっと待ってくれねーッスか」完二の言葉に、秘密結社改造ラボを進む自称特別捜査隊の面々が立ち止まった。「どうした、完二」「…………」鳴上の問いに答えず、完二はくるりと直斗へ向き直る。そしてツカツカと近づいて、彼女の腕を掴んだ。「えっ…

曇り空の日の出来事

行きつけの手芸店を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。ここへ来たのは学校が終わってすぐだったはずなのに、あれもこれもと見ているうち、時間の概念がなくなってしまったようだ。携帯を取り出して時間を確認する。まず目に入ったのはデカデカと表示され…

言ノ葉

※ペルソナ×探偵NAOTOのネタバレあり。「つ、らかった、ら、いつ、でも、いえ、よ。お前、は、おれ、の……」携帯のディスプレイとボタンを目で何度往復させただろう。使いこなせていないわけでは決してないが、このまどろっこしさはいつまでも慣れない…

巽 完二再失踪

「あっ……」「んあ?」PM07:45 沖奈駅前────巽完二は、白鐘直斗を見て、目を丸くした。そして。「っ……」「たつ……あっ」今来た道を逆方向へと走りだした。「誰だよ、ナオちゃん。もしかして、知ってるやつ?」「う、ううん……! 知らない人…

罪、惑い

「……っんの、バカッ!! 直斗、危ねぇっ!!」「!!」……格好つけて庇ったものの、テメェがそのままぶっ倒れてちゃ意味ねえだろうが。「……巽くんっ!」「……っ……?」目を開くと、見慣れた天井があった。……あ? さっきまでテレビん中にいたんじゃ…

モラトリアム

「ヒッ、ヒル魔くん! こ、こんなところでっ」「……ちったぁ黙ってろ、糞マネ。舌噛むぞ」「や、やだっ、もうっ」まもりは、無駄な抵抗だと思いながらも、ヒル魔に抑えつけられている体をよじった。案の定、動く気配などない。「……っ……!」くちゅっ、と…

夏の暑い日

部室の重い扉を開くと、熱く眩しい陽射しが降り注いでくる。蝉の声と一緒 に。「ムッキャー!! 何だよこの暑さは! 立ってるだけで汗だくじゃねーか!」「お前の声が一番暑苦しい」モン太の言葉に、揃って突っ込む十文字、黒木、戸叶の声も熱さの為か元気…