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好きな人

「どうしたんだよ、セナ。考え込んじゃってさ」ハードな部活の後、制 服に着替え、カジノテーブルで何かを思案している様子のセナに、モン太がネク タイを締めながら話しかけた。「うーん…。結構どうでも良い話なんだ けどね」シャープペンをくるくる回そ…

ヒル魔くんは、優しい。友達にそう言ったら、断固否定された。優しいのよ。すごくね。恋は盲目。私は恋に溺れたの。どんなにからかわれても。どんなに意地悪されても。結局最後 は私を抱きしめてくれるから。辛いとき、悲しいとき。あの人 は何にも言わない…

惚れ薬

からかいたくなる。無性に。怒った顔が見たくなる。いつも。目が離せなくなる。何故か。俺はまた姉崎まもりを見てる。ア メフトの試合や本気で何か考えたいとき、部活に専念してるときはさすがに見て はいないが。ふと顔を上げればあいつを捜してる。目で追…

ヒル魔くん!ヒル魔くん!私は何度も貴方を呼んだ。けれど、私の 腕の中で貴方はどんどん冷たくなっていく。いや…死なないで…!何度呼んでも貴方は目を開かない。私は泣き叫んで貴方を抱きしめる。いつも私を抱きしめてくれる腕は、動かない。そうして、そ…

確信犯

『あの…姉崎さん。お願いがあるんだけど…』顔も見たことない女の子 から、ラブレターをもらった。もちろん私宛じゃなくて、渡してくれっても の。封筒の宛名は……「『ヒル魔くんへ』…か」意外な名 前にまもりは少し驚く。学校内で誰からも恐れられてい…

真夏の恋のユメ

「ちっ」まもりが汗を流すほど苦労した原因の張本人は、舌打ちをしな がらもやはり、パソコンに向かっていた。まもりは救急箱を閉めると、無言 でヒル魔を見つめた。無理はして欲しくない。だけど、夢は諦めて欲し くない。感情が入り乱れてなにも言葉が出…

恋愛お題5

お題配布サイト様 Theme1.予想しなかった鼓動「なに、してるの?」まもりはパソコンを立ち上げ始めたヒル魔に声をかけた。横目で見られ、まもりは肩をびくりと震わせる。むしろその『びくり』は隣にいたセナの方が大きかったかもしれない。やっぱり声…

ヒビの入ったガラス

chapter.1 それは、とても脆く。「黙ってんじゃねぇ!」ヒル魔は右腕を壁に叩き付けた。横の棚の上から、雑然と置かれていたデータファイルが音をたてて落ちた。ヒル魔と壁に挟まれ、肩を震わせるまもりはヒル魔と視線を合わせないよう、下 を向い…

Memory Card

chapter1. リセット人生のリセット。んなことができりゃ、苦労はしねえ。過ぎたことなんかどうでもいいが、確かに今までひっかかるもんはいくらでもあ った。だが、選んだ道は進む。引き返さねえ。引き返したくもねえ。んな暇はねえんだ、俺には。…

マムシ騒動

「だぁーかーら、マムシは俺のモノなんスよ!乾先輩ッ」「そんなことデータは言ってないケド」………だれかコイツ等を何とかしてくれ…。ことの起こりは数十分前。俺、海堂薫が部活後、体力づくりとして腹筋をしていたときのことだった。「マムシぃ~♪手伝っ…

リーチ

「ふぅ~」部活を無断で休み、そのバツとして俺は球拾いを命じられた。当然と言えば当然で、俺はそのことについて部長に文句を言おうという気はさらさら無い。けれどラケットを持たない日々というのは俺にとって苦痛でしかなかった。だから、部活も終わり部員…

19cm

「世の中不公平ッスよね」「は?」学校の帰り道、自動販売機でファンタを買いながら、越前はそう呟いた。(つーか、俺の金だしよ)「何なんだよ、急に」俺は越前より先に買ったコーラを飲みながら聞いた。「桃先輩、身長何センチ?」「は?170だけど?」越…