好き

「あたしのこと、好き?」
「は?」

ストリートテニス場からの帰り、杏はそう、桃城に聞いた。

「だから、あたしのこと好き?」

すぐに聞き返してしまった言葉に少しむっとしながらも、杏はもう一度聞いた。

「…嫌いじゃない」

と、桃城は返した。
素直じゃないなと自分自身で感じながら。

「じゃあ、好きってこと?」

桃城の心中などわかりきったかのように杏は聞いた。

「そうなるな」

赤くなった顔を隠すように下を向いて、彼は自転車を押した。

「じゃあ、キスして」
「あ?」

思ってもみない杏の言葉にドキッとしながら桃城は顔をあげる。

「キス、して?」

にっこりと笑って杏はまた言った。

「私もモモシロくんが………好き」

最後の言葉で赤くなった杏を愛おしいと感じながら、桃城は自分の唇を杏のそれに近づけていく…。