「……」
「……」
俺が告白して、橘妹がOKして、付き合い始めて二日が過ぎた。
そして今、付き合ってから初めて逢い、初めて二人で帰っている。
お互い緊張しすぎて言葉が出てこないことをわかっていた。
部活が終わって校門を出ると橘妹が待っていて、「一緒に帰りたかったの」と真っ赤になって言った。
「おぅ」と俺も真っ赤になって言って部室から一緒に歩いてきた菊丸先輩にからかわれながら、二人で歩いてきたのだった。
(朝、雨降ってて良かった)
俺はすでに雨が上がり、星が雲の合間から見える様になった空を見つめた。
もし、雨が降っていなかったらいつものごとく自転車でこんな風にゆっくりは帰らなかったろうから。
下を向いたとき、橘妹の手が目に入った。
(手、繋ぎてぇな…)
瞬間的にそう思った。
そして、繋いでもいいのかな、と思った。
変な緊張が走る。
橘妹が嫌だったらどうしようと考えてしばらく葛藤を続けた。
「…なぁ」
「ん?」
葛藤の末、俺は橘妹に話しかけた。
「手…繋いでいいか?」
「…いいよ」
俺はゆっくりと橘妹に手を差し出した。
彼女の手に触れるとと心地よい暖かさが流れてくる。
「…モモシロくんの手、汗ばんでるね」
笑って橘妹が言った。
「そりゃぁドキドキしたから、さ」
そう言って俺はギュッと彼女の手を握った。
橘妹も握りかえした。
「あたしも汗ばんでるでしょ?」
「全然。俺にはこれくらいがちょうどいいな」
俺は空いた方の手で頬をかきながら照れ笑いをした。
「また、一緒に帰ってもいい?」
「あぁ」
もうすぐ、二人の時間の終わりが見えてくる。