心の奥で何か聞こえるとしたら。※連載中 - 1/2

chapter.1 十文字一輝

心の奥で何か聞こえるとしたら、それはお前の声であって欲しいと間違いなく思った。

「あーー。なーに青春しちゃってんだ、お前は」

ぎくりとして、一輝は今までの視線を、浩二へと戻した。
にやにやとにやけるでもなく、手に持った焼きそばパンをどこから食べようかと算段している。

「チアリーダーに熱い視線の十文字一輝。 さて、誰を見つめていたんでしょー」

庄三を見れば、ジャンプのボーボボのページを1ページずつめくりながら堪能していた。
一輝はこの場から逃げ出したい気分になった。
からかわれ、冷やかされるのも辛いが、これはこれで結構辛い。
ため息が出る。

「ふぇ?ふぁれふぁ? ふぉんひゅふぉんのふぉふぁ?」

ようやく浩二は焼きそばパンにかぶりついたが、口いっぱいに含み、そのまましゃべろうとしたためうまく言葉が出なかった。
飲み込んだ後、もう一度尋ねる。

「誰だよ。ぼんっきゅっぼんの子か?」
「おー。さつきタイプ」

自分の言葉に興奮したのか、浩二が周りに華を飛ばさんとする勢いで、練習中のチアの面々を見る。
庄三も同じように校庭の真ん中を見つめた。

「お前らなー…」

そりゃよ。
俺だって良い体つきの女は好きだぜ?
あの猿やバスケ部連中じゃねえが、マネージャーだっていい女だと…

ゴスッと、背中に冷たく堅い筒状の物体。
背筋が凍りそうな感覚。

「なんだかな。無性にお前を打ちたくなった」

そのハートマークが付きそうな勢いの悪魔の囁きに、一輝は声も出ないほど恐怖感に包まれた。
蛭魔妖一だ。

「……変な気は起こすんじゃねーぞ? もっとも、てめえは大丈夫だと思うがな」

ヒル魔は『てめえ』にアクセントを置き、一輝の背中に突きつけた銃口をそらした。
この男には全てを知られている。
自分が誰を見ていて、誰に好意を寄せているのか。

「部活始まっぞ。糞長男、弟共を連れてきやがれ」

見れば、浩二と庄三の二人は、まじまじとチアメンバーを見ようと自分より遠いところまで離れていた。