chapter4. 見つけ出した答え
冷蔵庫の明かりは暗かったキッチンを照らす。
卵を数個取り出し、バタンと閉めた。
静かだ。
意味もなく蛇口をひねる。
水に手を浸した。
水道水の音が頭のなかに木霊する。
思い出すのは、あいつの顔だけ。
俺はボールに卵を割って入れた。
「…ま…く…」
後ろから声が聞こえる。
「待ってろっつったろ」
俺は振り向く。
あいつの顔へと目線を持っていったが。
けれど視界に入ったのは女の脚。
「姉…崎…」
ふらつく体を壁で支え、『姉崎』は確かに立っていた。
泥門デビルバッツの赤いユニフォーム。
浮かび上がった女の身体。
「ヒル…魔く…」
先ほどのように青い瞳に涙を溜めて。
俺は自分でも気づかないうちに姉崎を抱きしめていた。
「ふざけんな、てめえ」
「うん…ごめ…」
「謝ってすむかよ! いきなり小さくなりやがって、どうやったらガキにもどんだ よ」
「…わかんないけど…でも…」
姉崎の手が弱々しく俺の背中に触れる。
「答えが…見えた気がするの」
自分のなかのヒル魔の存在。
ヒル魔のなかの自分の存在。
ずっと、自分だけが想いを募らせていると思っていた。
自分だけが本気で愛していると思っていた。
怖かった。
いつか突き放されてしまいそうで怖かった。
お前なんかいらないと言われてしまいそうで怖かった。
でも。
貴方は自分を助けてくれた。
すぐに『姉崎まもり』だと気づいて。
そして……
「……セナに…嫉妬した?」
姉崎はか細い声で呟いた。
俺は、姉崎の頭を自分の肩へと押しつける。
「……うるせー……」
その通りだ、バカ。
こいつのにやけた顔を見て、初めて俺も笑った。
『答え』…か。
俺にも何か、見えたような気がする。
「もうあんなことになんじゃねえぞ」
「うん」
俺はお前を欲している。
自分じゃどうしようもねえほど。
知らねえ間に、こんなにも。
「俺はもう、こんな思いはしたくねえ」
もう、二度と押すな。
人生のリセットボタンを。