リズムにhigh!

いつどこで知り合ってしまったのか。
何でここ数日でものすごく仲良くなってんのか。
周りはどうして暖かく見守ってんのか。
そんなのを見ていても俺は彼女が好きで、本当に愛しい。

「………な・ん・で!! てめぇがここに来てんだよ」
「よっ!」

俺、神尾アキラは今、人を殴りたい気持ちでいっぱいだ。
だが、杏ちゃんがいる手前そんなことは出来ない。
杏ちゃんとふたりっきりでテニス、と胸を弾ませてテニス場に来たのに、こいつが……青学の桃城武が、満面の笑みでここに居る理由を教えてくれ…。

「あのね、アキラ君。今日はモモシロくんとデートなの!」
「はぁ?!」

俺は驚きと怒りで桃城を見た。
前にも同じ展開があった気がする。
だが、桃城の反応が以前とは違ったのだ。

「そ、デートだ」
「なにぃっ!」

俺は桃城と杏ちゃんの両方を見比べた。
相変わらず桃城は笑顔で、杏ちゃんは少し頬が色づいていて。
俺は静かに拳を握りしめた。

「……付き合ってたのか?」
「あぁ…。まぁな」

桃城は俺より低く、落ち着いた声で答えた。

「へぇ…」
俺は桃城の顔も杏ちゃんの顔も、見ることが出来ず、下を向いていた。
杏ちゃんが…桃城と………。

「悪ぃ、神尾!今の嘘っ!!」
「………はぁ?!」

かなり暗くなってた俺の耳に明るい桃城の声が響く。
俺は奴の言葉をうまく飲み込めず、少し遅れて反応した。

「あのね、アキラ君。これ…ちょっとした実験なの」
「実験…?」
「そーそー。ちょっと驚かせてみたかっただけだったんだよ」

俺はやっと状況を理解した。
つまりは、俺はありもしないことに沈んでたのだ。

「………そうか。良かった」

小さい声でそう呟いて俺は、桃城に指を指した。

「桃城!やっぱりお前に杏ちゃんは似あわねぇ!!」
「あん?どういう意味だ」

俺は自信に満ちた顔で桃城を見る。
………杏ちゃんは俺のモノなんだからな!

「さぁーて、やるかテニス!今日もリズムに乗るぜ♪」
「……調子良いなぁ、お前」

俺はテニス場の階段を駆け上がる。
まだ、俺にもチャンスはある!
好きだぜ、杏ちゃん。
大好きだ。