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キスの味

「ねぇ、先輩。キスってどんな味がするの?」「あん?」いつものように越前をチャリの後ろに乗っけて暗い道を進んでいたら、突然そいつがそんなことを言い出した。「どんなって…人によるだろうがよ」俺は少し考えてそう言った。「お前、アメリカ帰りだろうが…

ショウサンハゼロ

あぁ、くそ。俺はとんでもないヤツを好きになっちまったみたいだ。勝算なんて、ゼロじゃねえか。「L!O!V!E!リョーマ様ぁ!」放課後の男子テニス部のコートに小坂田朋香の声が響いた。そう珍しいことではない。時間が空けば必ず彼女はこの場所で応援を…

僕の大切なひと

あいつにだけは渡せない。渡さない。僕の大切なひと。「勝負だっ!桃城武!!」「あん?」俺はストリートテニス場の階段の上から、下の道を通過しようとしている桃城に向かって叫んだ。「杏ちゃんは渡さねぇっ」首を傾げていた桃城は、今の言葉で全てを飲み込…

届かない花

「神尾くーんっ」「あっ、杏ちゃん…って、わっ!」校舎から、俺の居るテニスコート前へと走ってきた杏ちゃんは、俺の前に来ても速度を落とさず、そのまま俺に抱きついた。「あははははっ、びっくりした?」そう言って笑う杏ちゃんにドギマギしながら、俺は何…

リズムにhigh!

いつどこで知り合ってしまったのか。何でここ数日でものすごく仲良くなってんのか。周りはどうして暖かく見守ってんのか。そんなのを見ていても俺は彼女が好きで、本当に愛しい。「………な・ん・で!! てめぇがここに来てんだよ」「よっ!」俺、神尾アキラ…

いつもと違う何かが

「……モモシロくん? モモシロくんってばー」「……ん? あぁ!」桃城は、杏の疑問系から不機嫌系に変わった声に、やっと我に返った。ついつい、周りから言うなら柄にもなく、本人からしてみれば割と頻繁に、なのだが、考え事をしていた。「ワリワリー。な…

夏祭り

「おっまつりだーっっ!」浴衣の袖を揺らしながら、菊丸が嬉しそうに声をあげた。毎年のことながら、この青春台の夏祭りは多くの出店や人でごったがえし、とて も賑やかだ。そんな夏祭りに、普段から仲の良い青学面々と共に桃城はやってきた。1年に一度しか…

風邪

うっかりした。風邪ひいた。夏風邪かよ、このやろう。バカは風邪ひかない、と言うから俺はバカじゃなかったのか。いや、夏風邪をひくのはバカだと言う話も聞いたこともある。どっちだよ。どっちなんだよ。・・・そんなことはどうでもよくて。全国大会まであと…

押さえきれない

「どしたの、モモシロくん」前を歩く桃城に、杏は話しかけた。「なんでもねぇ」何でもなくなさそうに、桃城は言った。小走りで追いつき、ひょこっと頭を出し、彼の顔を覗けば、その彼はぷいっと顔 を背けた。「……眉間にしわ寄ってるよ?」それでも桃城はそ…

トリプルデート

「ねぇ、トリプルデートしない?」「トリプルデート…ッスか?」部室で着替えていた、桃城と越前に不二がやはり着替えながら尋ねた。「そ。朋香が是非したいって言ってね。桜乃ちゃんには多分伝わってると思うけど」桃城と越前は顔を見合わして、そうだろうな…

幸せ、不幸せ

何でだろう。私の中にはずっと桃城くんが居るのに。桃城くんが好きで好きで仕方がないのに。跡部くんと付き合うことになっちゃった。「好きだったのに。お前のこと」桃城くんはへへっと苦笑いをした。そんなことを私の目の前でさらっと言わないでよ。『好きだ…

こいつだけ。

「モモシロくんって浮気するタイプよね?」「………は?」休日の俺の部屋。あどけない顔でとんでもないことを言う杏に、俺はそう返さざるをえなかった。「だーかーら、浮気しちゃうタイプよね?」「………いや、何で?」付き合って数ヶ月。まだまだラブラブ真…