図書館戦争:堂上 篤×笠原 郁

すれ違い

「またおとり捜査ですか?」郁は半ば呆れるような声を上げた。以前、毬江のためにと意気込んで勝手出た痴漢のおとり捜査。それ以降、成果に満足した玄田は、こうして度々郁に痴漢撲滅の任務を命ずる。確かに不埒な人間は郁としても蹴り飛ばして締め上げたい。…

貴方のしるし

「……堂上……教官」電話の向こうにいる相手の名前を呼ぶ。想像してたより、自分の声は震えていて、こんなにも余裕がないんだ、なんて頭の隅で矛盾したように考える。『郁? どうした、こんな時間に』寝入っている柴崎に聞こえないように、声量を絞る。それ…

芽生え

『あたし、王子様からは卒業します!』 堂上がフリーズし、小牧を笑いの渦に巻き込んだ、郁の王子様卒業宣言から数日が経つ。自分を助けてくれた正義の味方、6年前の王子様。それが、入隊当初から火花を散らしていた目の前の堂上だったなんて思い…

お酒とふたり 前編

「……笠原士長、寝ます!!!! おやふみなさひ……」「堂上ー! 笠原落ちたぞー」「っ━━━━! だからアンタ方、コイツに飲ませんの止めて下さいよ!!」良化隊との攻防によるひとつの山を超えたある日、図書特殊部隊では慰労会という名の宴会が催され…